二日連続の日本人のノーベル賞受賞のニュースに、驚きと喜びの声が日本中を駆け巡りました。受賞は疑問を解決すべく粘り強く研究に取り組んだたまものでしょう。「なぜ?」をそこで終わらせず発見・解決にと駆り立てる探究心を育んだ環境があったに違いありません。
過去から未来へ、足元から宇宙へと広がり深まる「なぜ?」「どうして?」という探究心を生み出すみなもとは豊かな感性であり、読書はその感性を育みます。
今回は、そのような感性を育むきっかけになる作品をいくつかご紹介致しますので、ご参考にしていただけますと幸いです。
『おじいちゃんがおばけになったわけ』というタイトルの絵本があります。主人公の男の子を、心臓発作で亡くなった祖父が夜な夜な訪ねてきます。「この世に忘れ物があると人はおばけになる」と本に書かれているのを見つけた二人は祖父の忘れ物探しをします。ようやく見つけた忘れ物は…。男の子にさよならを言うことでした。人は実際に死後の世界を体験することはできませんが、この絵本に触れ、死にゆく人の想いを感じることができるでしょう。
ある町の広場に五匹の動物たち、ゾウ、キリン、サル、アヒル、ライオンが住んでいましたが誰も知りませんでした。透明で見えなかったからです。ちょっと寂しい気持ちだった動物たちが、あることをきっかけに色がつきみんなに見えるようになり、町の人たちも大喜び。この『まちのひろばのどうぶつたち』のように、皆から見えていない寂しさ、見えるようになった喜びがテーマの本を、最近見かけます。子どもたちの気持ちに寄り添う絵本です。
湖のほとりにうなだれてたたずむ一人の少女…。『ひとりひとりのやさしさ』という絵本の表紙です。転校生のマヤを無視しつづけ、優しさを届けるきっかけを失ってしまい後悔している姿です。子どもたち一人ひとりに行動を振り返らせる先生の言葉は、読み手の心にストンと落ちてくることでしょう。
<今回紹介された本の情報>
『おじいちゃんがおばけになったわけ』
キム・フォップス・オーカーソン/文
エブァ・エリクソン/絵 菱木晃子/訳 あすなろ書房
『まちのひろばのどうぶつたち』
井上コトリ/作 あかね書房
『ひとりひとりのやさしさ』
ジャクリーン・ウッドソン/文
E.B.ルイス/絵 さくまゆみこ/訳 BL出版
東京学芸大学特命教授
對崎奈美子
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