Vol.232子どもが自分の思いを形にする表現の指導
子どもの声に耳を傾けることから

 学校教育では子どもたちが思い描いたイメージを作品として表す学習活動が多くあります。それぞれの子どもの目に見えないイメージや思いを教師が指導していくことはなかなか難しいものです。子どもたちが自分の思いを形にしていくためにできる教師の役割とは何でしょうか? そこで、子どもとの対話という観点から考えてみたいと思います。
 まず、子どもが表現しようとするイメージや思いは絶対的なものではなく、不確かで変容するものであり学習活動のプロセスから構築されていくものと考えます。ですので、学習プロセスでは個に応じた指導が大切になりますが、教師はどうしても学習のめあてや身につけさせたい資質・能力といった観点から子どもの作品を捉えて指導をしてしまいがちです。そうではなく、まずは子どもを一人の表現者として尊重し、その様子や言葉、作品等から子どもの思いを感じとり、気付いたことやわからないことを作者である子どもに教えてもらうといった姿勢で子どもの声に耳を傾け対話をすることが大切です。そのためには子どもの学習の様子をよく観察したり、子ども目線になって考えたりする必要があります。そうすることで教師がかける言葉やタイミングも変化し、対話の質が変容してくるのではないかと考えます。また、子どもの活動の質を捉える教師の眼が培われることにもつながり、子どもが創造的な表現活動のプロセスで発揮している資質・能力を捉えることができるようになっていきます。
 このように、教師が子どもの声に耳を傾け共感的に対話をしながら、観察によって捉えた子ども自身も気づいていない活動の質を言語化し子どもと対話していくことによって、子どもの新たな気づきが促され学びを深めていくことができるのです。それは、子ども自身が対話を通して自分が表現しようとしている思いやイメージを言語化することでもあり、自らの表現を価値づける省察的な学習行為でもあります。
 また、子どもの声に耳を傾けることは教室における教師が教え、子どもが教わるといった関係性を変容させ、対話的で共感的な学習空間をつくり出します。作品を介して子どもと対話をすることは、教師と子どもという二項関係ではなく、子ども、作品、教師という三項関係による対話です。それは共感的で豊かなコミュニケーションの方法となるのです。教師はそのロールモデルとして子どもの発言を尊重し、安心して自己開示できる学習空間をつくり出していくことができるのです。
 イメージや表現活動は不確かで多義的なものです。しかし、だからこそ子ども同士や教師と共に対話をすることで、学習の可能性が開かれその意味や価値を生成していくことができるのです。
 学習指導要領においても言語活動の充実が示されています。表現活動においては教師と子どもが作品を介して共におしゃべりをするといった感覚で互いの言葉を紡ぎ合える多声的な言語活動が、子どもの自己表現を引き出す豊かな学習につながっていくのです。

東久留米市立第十小学校
和久井智洋
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