特別の教科 道徳で、自分を深く見つめるために大切にしたい対話とは、他者と考えを交流し、自分の考えを修正したり自信をもったりする話し合い・語り合いです。
そして、同じくらい大切なのが、自分の生き方(過去の体験、現在の思い、将来の希望)の中の課題について、深く感じたり考えたりする「自己との対話」です。
道徳の授業で意味のある「対話」を行うことをせず、方法論に即した議論だけに終始することは、道徳授業の特質をふまえた授業とはいえません。
では、道徳授業の特質と何でしょう。
『小学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』(平成29年6月 文部科学省)では、道徳科の目標を「道徳教育の目標に基づき、よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」としています。
ここで触れられている自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深めることは「自己との対話」に他なりません。
元全国小学校道徳教育研究会会長の荻原武雄先生は、著書『あたたかい道徳授業をつくる』(明治図書)の中で、「道徳授業とは、『ねらいに照らして、子ども一人ひとりが、自分の生き方(過去の体験、現在の思い、将来の希望)の中の課題について、深く感じたり考えたりする営み』であり、子どもたちがねらいとする価値にかかわって感じ、考える中心は、教材の主人公の心や抽象的な理想論ではなく、自分自身の心の姿やありさまの問題である」と述べています。
人間としてよりよく生きようとする人格的特性である道徳性は、児童・生徒が自己の道徳上の課題(過去の体験、現在の思い、将来の希望といった自分の生き方)と素直に向き合い、自己を深く見つめ、自己と対話するところに育つのです。