Vol.250未来の教室と教師の姿

2023.10

 教育DXのDXは、「デジタル・トランスフォーメーション」といいます。トランスフォーメーションは、「変身」という意味です。

 教育DXとは「学校ⅠCT環境整備」のことではなく、GIGAスクール構想により整備されたICT環境を土台にして、学校の仕事の構造を「変身」させることです

 デジタルと聞くと、ICTの活用という印象が強く、何か従来とは異なる特別な授業を生み出し、専用のソフトが必要でそれを利用するなどと考えてしまうかもしれません。しかし、これではICTを使うことが目的となってしまいます。教育DXとは、ICTを使うための整備をし、使ったから終わりではなく、ICTを用いることで、学習の中心を教師から生徒へ変えていくシステムではないかと思います。

 例えば、学習の内容に関わる一定の理解は、事前にICTを利用していち早く終え、対面授業ではもう一段深い学びへと進んでいくような方法があげられます。一人一台端末を用いて、調べてわかるような内容は、事前に調べてから対面授業に臨み、問題解決学習や探究学習などを通して、「考える」「学ぶ」という行為を主眼に置き、より主体的に取り組ませる学習法へと移行する。そうすることで、生徒中心の授業となるのではないでしょうか。

 以上を可能にする方法として反転学習があげられます。反転学習とは、知識の伝達のようなコンテンツベースの講義動画を事前に視聴して学習し、対面授業では、思考力・判断力・表現力や主体的に学習に取り組む態度などの資質・能力を身につけることを重視したコンピテンシーベースの授業を行います。したがって、反転学習は、授業指導を事前に動画等で行うことで、伝統的な教授法による指導の質やコンテンツの価値を犠牲にすることなく、問題解決学習や探究学習などを通して、生徒に主体的に学習に取り組ませる学習法へと移行することができ、コンテンツ中心・教師主導の授業から生徒中心の授業へ変えることができると考えられます。

 反転授業を通して、教師は今までよりも個別で生徒に対応したり、生徒の協働学習を促すこともできます。解決が難しい問題に対しては、共に考え、子どもたちと同じ目線で学びを深めていくことになる可能性もあります。つまり、授業の中でよい学び手としてのモデルを、身をもって示すこと。これが未来の教室における教師の役割として重要になるのではないでしょうか。

[参考文献]
浅野大介(2021)「教育DXで「未来の教室」をつくろう<GIGAスクール構想で「学校」は生まれ変われるか>」学陽書房P26
奈須正裕(2021)「個別最適な学びと協働的な学び」東洋館出版社P213~230
ジョナサン・バーグマン アーロン・サムズ著 東京大学大学院情報学環 反転学習社会連携講座序文・監修 上原裕美子訳(2015)「反転学習」オデッセイコミュニケーションズP74~75

静岡県立三島北高等学校
関本周平
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