Vol.036リアルな体験が子どもを成長させる②青少年の体験活動等に関する実態調査

2016.04
 4月の特集は「リアルな体験が子どもを成長させる」です。文科省が進める『青少年体験活動奨励制度』。今年度から、制度の枠組みが広がり、あらたに小・中学生も対象として、体験活動を奨励する制度に生まれ変わります。
 今月は、制度の解説を中心に、体験活動をテーマにした特集をお送りします。

2.青少年の体験活動等に関する実態調査

36_pic_01
 読者の皆さんは、この表題の調査を知っているだろうか。念のためリンクをかけておく。「青少年の体験活動等に関する実態調査」 (平成24年度調査)報告書

 是非、この調査結果を読んで欲しい。以下、部分的な引用だが、気になる言葉が並ぶ。
「自然体験が豊富な青少年ほど、自己肯定感が高い傾向にある」P109より
「自然体験が豊富な青少年ほど、得意な教科として多くの教科を挙げている傾向にある」P122より
「お手伝いを多くしている青少年ほど、得意な教科が多い傾向にある」P124より
「お手伝いを多くしている青少年ほど、自立的行動習慣が身についている傾向にある」P128より

 いつのころから、子どもたちは机に向かう勉強を重視するようになったのだろうか。大人たちは子どもに机に向かう勉強をさせるようになったのか。放課後に塾なんかに行ったら、本当に机に向かう勉強のことだけで一日が終わってしまう。体をつかって、体、五感で感じて感得して成長していく体験というものが消えていく。暮らしの中からいつの間にか「火」が消えてしまったように、我々の生活の中で意識しないと消滅してしまうのかもしれない。勉強とその結果からわかりやすい成果(進学)といった、ある意味、効率性の良い教育を手に入れ、我々は何を失っているのか。
 いま、失っていることを「体験活動」と称して意識させようとしているのが、この報告書ではないか。報告書に指摘されなくても、「体験活動」が、子どもの生活と成長に大きな影響を及ぼしているということは、我々自身の体験からも言える。
 こんな背景を持ちながら、青少年体験奨励制度というものが立ち上がってきている。
東京学芸大学教授
鉃矢悦朗
pdfをダウンロードできます!