Vol.265先生だって学びたい!③
研修観の転換と東京学芸大学が提供する新しい学びのプラットフォーム

2024.09

研修観の転換
 2021年11月に中央教育審議会特別部会より「令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて」という審議のまとめが発表され、教師自身の学び(研修観)を転換する必要があると言われていることについて前回までに述べさせて頂きました。私はこの研修観の転換を次の図1の3点にあると考えています。

教育者の主体的な学びのためのプラットフォーム
I Dig Edu

 東京学芸大学 先端教育人材育成推進機構教育者研修プラットフォーム開発ユニットでは、教員の主体的な学びを支援するためのプラットフォーム「I Dig Edu」を開発し、2024年7月22日より運営を開始しました。「I Dig Edu」は、上記の3つの研修観の転換の実現を目指して開発されました。
 まず、一つ目の「限定された組織が限定された内容の研修を提供するのではなく、教員一人一人が自らの学びを選択し、主体的に学ぶことを組織が支援する」に対応するため、「I Dig Edu」では、教育委員会や学校のような組織や団体が教員を受講させるということではなく、教員が個人単位で選択し、学んでいく仕組みとなっています。また、いつでもどこでも好きな時に好きなだけ学べるオンデマンド動画が視聴できるのはもちろんのこと、対面やオンラインでのライブの研修の申込をすることも可能となっています。大学の特性を活かした「専門的な内容」(各教科に紐づいた学問の専門的な内容、認知心理学等教育に関連した専門的な内容)、「先導的な教育方法」(STEAM教育や複線型授業等)、さらには、福祉や社会教育、最新のテクノジーや社会人に求められる新しい資質・能力等の「教育の周辺的な内容」等、多様で豊かな講座をラインナップしています。
 次のポイントである「研修実施者が教員の学びを評価していくのではなく、教員一人一人が自ら振り返り、評価すること」に対応するために、講座毎に簡単な振り返りレポートを提出してもらい、それに対して生成AIがコメントを戻す仕組みとなっており、教員が自らの学びを評価できます。
 最後のポイントである「組織側が学習履歴を管理するのではなく、教員一人一人が個人で自分の学習履歴を管理し、PRすること」にも対応しています。これまでの学習履歴の殆どは講座名だけを記録していました。「I Dig Edu」では、講座名、講座で学んだ内容のポイント、それが紐づく教員としての資質・能力の項目、振り返りレポート、AIからのFBコメントの全てが記録され、振り返りたい時に見られるようになっています。さらに、教員が求められる資質・能力毎に、どれだけの学びが重ねられてきたかを点数化した「学びのステータス」も表示され、点数が一定以上になるとデジタルバッジ(国際標準のオープンバッジを活用)を受け取れる仕組みとしています。これらの学習履歴、学びのステータス、オープンバッジは全て教員個人が管理するものになっており、管理職や教育委員会に見せるかどうかは教員が判断することができますし、他の組織に異動しても、自らの学びをしっかりとPRすることができる仕組みとなっています。
 このように「I Dig Edu」は「教員一人一人が個別最適化した主体的な学びを実践できること」、「教員一人一人が自分の学びや学びの履歴を自分で管理、調整できること」を基本コンセプトとしたプラットフォームになっています。
 今後は、さらにこのプラットフォーム上で、教育関係者の協働的な学びが促進され、教育者の学びコミュニティが形成されていくように研究開発を進めていきたいと考えています。


教育者の主体的な学びのためのプラットフォーム I Dig Edu
教育者の主体的な学びのためのプラットフォームバナー
https://idigedu-catalog.etudes.jp/gakugeidaientry/act/v1/top

東京学芸大学 教授
金子嘉宏
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