Vol.261著作権教育②
学校と生活の著作権の違い・子どもに教える時は漫画や音楽

2024.07

 『大造じいさんとガン』の筆者・椋鳩十さん、『赤とんぼ』の作詞者・三木露風さんと作曲者・山田耕筰さんに許可を取らずに、学校で作品を使えるのは、なぜでしょうか。

 前回、著作権法の原則は「作品は作った人のもの。使う時・増やす時・変える時には許可を取る」と書いたところです。約200ある著作権法の条文のうち、第30~50条は「許可を取らないで使える場合」つまり『例外』が書いてあります。第32条「引用」は論文を読んだり書いたりする方ならば、ご存知でしょう。括弧で区切ったり、出所を書いたりするのはマナーや作法ではなく法律です。
 そして、第35条が「学校」です。学校は『例外』なのです。本来は作った人に許可を取るところを、授業の範囲であれば著作者の利益を不当に害しない等の条件で、許可を取らずに使えます。教科・特活・学活、行事、児童生徒会活動、クラブ・部活で、「教員⇔子ども」に限ります。教員⇔教員、教員→保護者は該当しません。
 また、第35条にはオンラインでの使い方も書いてあります。年額1人あたり、小学生120円、中学生180円、高校生420円を支払って著作物をオンライン上でやり取りするSARTRAS(授業目的公衆送信補償金等管理協会)の仕組みです。ほとんどの小中高で教育委員会等の設置者から支払がされており、補償金は作った人に渡ります。

 恐いのは、学校だから例外的に許されている使い方を、生活の中で同じようにしてしまうことです。作ったスライドにキャラクターのイラストや写真、グラフを付けると、学校なら褒められますが、生活だと違法になるかもしれない。これを子どもたちに理解させなければなりません。
 子どもに出前授業をする際には『ワンピース』や『Official髭ダンディズム』等、子どもたちに身近で、子どもたちが大好きな著作物を教材として使います。好きな漫画を描いた人や好きな歌手が、悲しんだり苦しんだりする姿を見たくないと子どもは素直に受け入れます。また、気を付けているのは「『ダメ』を教えない」ということです。「海賊版サイトを見てはいけません。」ではなく「作者が悲しむから、本を買ったり、公式のアプリで読んだりしよう」とか、「キャラクターを使ってはいけません」ではなく「使い方・利用規約が書いてあるページを探そう」と言います。

 子どもは使う人・作る人の両方になり得ます。偏りのない指導が必要です。

東京学芸大こども未来研究所 教育支援フェロー
原口直
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