個別最適な学びとは?
前回は「教員集団の多様性を実現する」ために、教員の学びを個別最適化し、各先生の得意技を磨いていく必要があるということを述べさせて頂きました。今回は教員の個別最適な学びについて考えてみたいと思います。教員の学びは①教育委員会などが提供する研修、②校内での学び合い、③教員各自の主体的な学びで構成されていると言えます。この学びを図1のようなマトリクスで分類してみましょう。①の研修は概ね標準化された内容を標準化された方法で学ぶという右上にあたります。③の主体的な学びは個別化した内容を個別化した方法で学ぶ左下にあたると言えます。当り前のことですが、右上の学びでは学びは個別最適化しません。つまり、教員の個別最適な学びを実現するには左下に当たる教員の主体的な学びを促進する必要があるということになります。
専門性と先導性
学習内容を個別化すると言っても、あくまでも教員という職業上の学びであるので、何を学んでもいいよということにはなりません。では、教員という職業ではどのようなことを学んでいくとよいのでしょうか。端的に言えば、当り前ですが、教員として学びが十分でないことと言えます。当然、学び足りていないことは教員一人一人で違うので、ここに個別最適な学びが現れます。ただ、前回から述べているような凸凹の組織を形成していくためには、マイナスを0にするという発想ではなく、プラスを伸ばしていくことが重要になります。「ここが弱いから」ではなく、「これが面白そう(好き)」という発想のほうが適していると言えるでしょう。
教員になる人の「好き」には2つの特徴があると思います。一つは「好きで学んできた学問領域がある」ことです。物理の先生はやはり物理が好きなのだと思います。(物理なんか嫌いという先生もいらっしゃいますが、きっと気持ちの裏返しだと思います。)当然、物理は学問として進化し続けますので、物理という学問領域では学ぶ内容は常にアップデートされていきます。ここに先生方が面白いと感じられる学びがあるのではないでしょうか。これは、教員の学問的な専門性を高めることになります。
もう一つの特徴は「教育が好き」です。教育の方法も日々、研究され、深化していきます。「子ども達にとってもっといい授業をしたい」という思いは先生方の一番の思いではないでしょうか。ここにもう一つの先生方が面白いと感じられる学びがあります。これは、教員の先導性を高めることになります。
もう一つ、忘れてはいけないことがあります。「先生だって社会人なんです!」ということです。産業界では人的資本経営が注目され、社員一人一人の個性を充分に育成することを「資本としての人材に投資すること」と捉え、それにより代替不可能な価値が向上し、自社の価値も向上するという考えの下、社員の多様な教育、学びの実現が模索されています。教員も社会人ですから、社会人としての最先端の学びを受けられる環境を実現していくことも重要になります。
次回は、「教員の研修観の転換」について考えてみたいと思います。