教師は忙しい職業です。授業の教材や計画だけでも大変なのに、学校の中では様々な仕事の分担があります。ウィークデイの残業も多く、部活動で週末にも勤務があることもあります。
40代のB先生は、経験豊富で、生徒にも慕われていました。B先生は以前の学校では、早朝に出勤し、帰りも夜遅くなるのが日常でした。学校では多くの仕事をし、学校外でも組織の役員をしていました。B先生の生活は忙しいが、充実したものでした。
しかし、新しい学校へ赴任してから学校の環境が変わり、B先生は管理職から、今までやったことのない仕事をまかされてしまいました。B先生は新しい仕事の分担は難しいと思ったのですが、管理職から是非と言われ、引き受けてしまいました。しかし、数か月後、新しい仕事の内容がよく把握できず、自分の意欲も出ない中で、仕事の進め方について、口論となってしまいました。B先生には、どうしても新しい学校での仕事の進め方が理解できません。B先生は体調をすっかり崩してしまい、休職するしかありませんでした。
これまで人並み以上に仕事をし、周りからも評価されてきたB先生にとって、休職は、非常にショックな出来事でした。B先生は、新しい学校での周りの人の仕事の仕方に、不安や憤りを感じ、それをおさえることができなかったのです。ストレスは、忙しさよりも、仕事の意味がわからなかったり、職場での人間関係の不調が強く関係すると言われています。その後、B先生は、仕事をしばらく休んだ後、転任して新しい職場にかわり、健康を少しづつ取り戻しました。
東京学芸大学教授
佐野秀樹
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