Vol.187出前授業を活用する③
「社長のなり方講座」実施の舞台裏

2020.06

 「社長のなり方講座」を成り立たせるには、「講師力の向上」が最も重要です。講師は経営者ですので、プロの講師ではありません。しかし「人を動かすこと」「ビジョンを語ること」「モチベーションを高めること」は経営者の仕事であり、この講座でも発揮されるべきものです。スタート5分で生徒の心を掴まなければ、50分の講座でメッセージを送ることはできません。そのため、教育に関心を持つ経営者に講師の依頼をしています。

 各講師の講座当日までの流れとして、まずは講座の趣旨を理解して、指導案を作成するところから始まります。指導案は、各都立高校の特性に基づき、それぞれのニーズにかなうよう考慮して作成します。実際の講座に際しては、学校やクラスによる個性もありますが、このひと工夫によって一人一人の生徒の心情に合わせた話ができるよう心掛けています。指導案作成後は、その内容のチェックに加えて、話し方や立ち振る舞いなどのパフォーマンスも含めた試行錯誤を行い、そうしてようやく講座当日を迎えます。

 講座を実施することで、思い描いていた指導案とのギャップを感じることも少なくありません。そこで学校の許可をもらい、ビデオで講座風景を撮影するようにしています。それは講座終了後すぐに反省会を行い、指導案の欠点や、話し方などの課題点に細かくチェックを入れるためです。この反省会が非常に効果的で、講師力の向上が期待できる時間です。ビデオを見た講師は、ほぼ全員が自身の講座に不甲斐なさを感じ、主体的に改善を行います。その結果、2度目の講座では見違えるように良くなるのです。

 今回は、「社長のなり方講座」を例にとって出前授業を通して伝えたいメッセージやその裏側を紹介しましたが、このように全国各地で各団体が工夫を凝らして、個性ある出前授業を実施していると思います。出前授業として与えられた1時間分の授業は、子どもたちにとっては学校の先生ではない人と共に学び合う貴重な機会です。その1時間分の学びとして地域人材は何を提供できるのか、そして学校側は出前授業の後もいかに学びを連続・発展させていくことができるのか。この意味で、今、「連携」のもう一歩先である「協働」が期待されていると感じています。

株式会社イニシャル 代表取締役
駒谷 誠
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