「〈学校図書館〉と米作り」と聞いて、図書館で米作りの本を使って、それに関する事がらを調べるのかなと思った方も多いでしょう。しかし、そのような簡単なこと(あえて言えば浅いこと)ではありません。ここでお伝えしたいのは、子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」を導き出す教育方法論と、現代の図書館における新しい情報収集の考え方です。
子どもたちに単に米作りをさせるだけでは、主体性は育成できません。まずは、自分たちで課題を設定させることが大事です。
そこで、「シンキングツール(thinking tool)」というものを使用します。ご存知でしょうか。子どもたちが自分の課題を設定するにあたって、漠然とした思いを明確な考えに発展させるための図です。ネット上には様々なシンキングツールがあるので調べてみてください。例えば、その一つである「ドーナツチャート」は子どもが知りたいことを、はっきりさせるのに役立ちます。ICTがなくても、鉛筆と紙さえあればできるのです。誰でも、どこでも作り、使うことができます。これを使って、子どもたちが何を知りたいのかを、子どもたち自身に考えさせましょう。これがポイントです。
蔵元和子氏考案のドーナツチャートの活用例ある程度課題が決まったら、今度は資料収集です。米作りは豊かな内容をもっているので、課題は多様なはずです。例えば、日本人はなぜ米を作ってきたのか、昔の米と今の米とはどこが違うのか、米はどう作るのか、作り方・食べ方はどのように変化してきたのか、海外で米作りをしている国はどこか、海外ではどのような作り方・食べ方をしているのか等、あげたらきりがありません。総合的学習の時間を使えば、米作りの実体験も含めたカリキュラムを作ることが可能ですが、いかに子どもたちが設定した課題と結びつけるかが重要です。
様々な課題に対しての資料探しに、最近は「パスファインダー(path finder)」を使います。パスファインダーは、もとの意味は、道(path)を探すもの(finder)ということですが、授業のテーマに即した資料のリストと考えてください。ただし、そこには情報検索の手順も書き込みます。「参考図書で調べてみよう」「図書で調べてみよう」「インターネットで調べてみよう」といったステップを作り、それぞれの資料のリストを書き入れます。子どもたちにとっては、何を、どのような順で調べればよいのかという道しるべになります。司書教諭や学校司書が作成し、先生や児童生徒に提供します。
今回は、米作りを教材の例として挙げましたが、〈学校図書館〉を活用すると、豊かな主体的学びの場にすることが可能になります。