Vol.172東京学芸大こども未来研究におけるSTEM教育プロジェクトへの挑戦

2020.01

 東京学芸大こども未来研究所では、前回までにお話しした今後日本が直面する事態を以前から予測し、未来のこどもたちに積極的に取り組んでほしい教育の在り方について検討してきました。
その一つとして、2013年にスタートしたSTEM教育プロジェクトがあります。最終回は、現在我々が挑戦しているSTEM教育プロジェクトについてご紹介します。

 STEM教育プロジェクトは、2013年に中学校技術科における教材開発からスタートしました。当時、こども未来研究所の柏原研究員(現中国学園大学准教授)と中学校技術科用の教材を開発・普及することから始めました。中学校技術科は、以前からラジオ等のキット教材を授業で製作することが多く、このようなものづくりを通して技術を学ぶ授業を行っていました。この従来の授業に対して、STEM教育の考え方を取り入れ、ブロック型教材を用いて、新しい電気自動車を設計、モデル化する授業を提案し、これからの社会に必要な自動車を子ども達が創る(エンジニアリング)する活動を取り入れました。

 以上のような考え方が、前回までにご紹介した算数や数学、理科等の教育を横断的・総合的に技術の教育に取り入れ、新しい価値を創り出す教育を目指すSTEM教育の原点になっています。さらに、この試みはTech未来教材の普及という形で、吉原研究員、渡津研究員に引き継がれています。

 この創る(エンジニアリング)活動を主軸にして、横断的・総合的に算数、数学、理科、技術等を学ぶ教育は、学校教育における各教科や学年を越えた連携で行われる必要があり、小学校におけるプログラミング未来教材の開発・普及、さらには今後開発が予定されているサイエンス未来教材、マス未来教材の普及・連携によって、教科間を横断的・総合的に連携した新しい授業が学校で行われるものと期待しています。

 また、STEM教育プロジェクトは学校教育に留まるだけでなく、社会教育、さらには遊びとのつながりの中で、横断的・総合的に進められるべきであり、学校の延長線上にある学習塾や学童保育、市区町村の社会教育支援活動の中でもプロジェクトが推進されています。
 このような社会教育で行われる理科系の事業は、よくサイエンス教室の形で行われることが多いですが、その前線で活躍してきた木村研究員、原口研究員が中心となり、新たなSTEM教育活動の推進と普及を行っています。
 また、遊び場ではおもちゃ王国との連携から、STEMを知りたくなる創る活動を通して、子ども達が存分に楽しめるSTEMQUESTスタジアムの開発・開催に至っています。さらには、理科系だけでなく文理横断の新たな試みとしてSTEAM教育への推進に挑戦しています。

東京学芸大学 教職大学院 教育実践創成講座 
教授 大谷 忠
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