Vol.149朝鑑賞でカリキュラム・マネジメント①
そもそも朝鑑賞とは 考える→考えたことを口にする

2019.06

 「朝鑑賞」とは、毎週金曜日、朝の10分間を使い、絵画等のアート作品を媒介にして教師と生徒が対話をする時間です※1。アート作品は、見る人によって様々な解釈の仕方があります。じっくりと作品を見て、考えたことを自分の言葉にし、人の意見を聴くという過程を繰り返し行ってきました。

 この対話型の鑑賞では「ビジュアルリテラシー、思考力、(傾聴や自己表現という)コミュニケーション能力」が身につきます。視覚と知性が結びつき、認知プロセスが活性化されます。この取り組みについて、子どもたちは次のように感想をあげています。

  • 見て考える力がついた。
  • 自分の思っていることが人に伝えられるようになり、表現力がついた。
  • 朝鑑賞を通してついた力が、たとえば数学の時間に活かされている。
  • 互いの考えを交換していることで自分自身の「見方・考え方」が変わった。
  • 友人との会話に必然として「ことば」が増えた。
  • 人の考えていることがこんなに違うのだということがわかって、人に優しくなれ、友達を大切にすることにつながった。
  • 自分が思っていることと人が考えていることは違うということがよくわかり、人の考えを受け入れられるようになった。
  • 自分の考えも広げることができるようになった。

 本校では「朝鑑賞」を行うことで、大人も子どもも「答えのない」世界を味わうことを覚えました。「ああでもない、こうでもない」と口々に言葉を発します。それぞれ互いの意見を聞き「そういう考え方もあるよね」と他者の意見を否定しません。自分の考えと他者の考えを擦り合わせ、新たな考え方を生み出していきます。他者を理解するには対話が重要だからです。この過程で子どもたちは多様性を理解していきます。21世紀型スキルというのは、こういうことを指すのでしょう。

 また、「朝鑑賞」によって論理的な思考を身につける端緒とし、考え方を身につけていきます。思ったことを口にしてみることは習慣化し、磨いていくことで論理性を身につけていきます。「朝鑑賞」は子どもたちが、隅々まで作品を見て、描いてあることを全部出し、作者の描いた意味まで考えていきます。「答え」がどこにあるのかはわかりません。でも、それがおもしろいのです。優れた知的作業が芸術(アート作品)を通して身についていきます。

 これが本校の行うカリキュラム・マネジメントです。毎週金曜日、朝のたった10分の取組で、学校が変わりました。新しい学習指導要領の目指すこれからの「学び」を手に入れ始めたのです。

※1 武蔵野美術大学と埼玉県立芸術総合高等学校美術科の学生・生徒作品を借用して行っています。

所沢市立三ケ島中学校 校長 沼田芳行
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