Vol.128「やってみたい!」がこどもの体力を高める③
きっかけづくり、習慣づくり

 最近、卒業生の出身の小学校が、現在も体育を研究教科として長年取り組んでいる学校だということがわかりました。偶然ですが、私は、毎年その学校の研究発表会に参加し、体育授業を参観させていただいており、そこでは、授業はもとより行間運動まで、しっかりとした実践が日常的に行われています。何より素晴らしいのは、学校の先生方全員が、こども達のためにという思いのもと、同じ方向を見ながら、工夫を凝らして様々な運動や遊びを考えていること、また、こども達を大いに認め励ましていることです。その卒業生に、小学校時代のことを聞くと、よく当時のことを覚えており、「小学校時代に様々な運動をやっていたことや、自分のがんばりやできたことを褒めてくれた先生方の関わりが今の自分をつくっています」と答えてくれました。その卒業生は、大学まで陸上競技を続け、実業団ではアジア大会へ出場する程の選手でした。

 これまで、「やってみたい!」とこども達が思えるような運動(遊び)や環境の提供について述べてきましたが、「やってみたい!」とこども達の気持ちが切り替わるきっかけづくりも大切だと考えます。「そんなにやりたいと思っていなかったけど、友達とやってみたら面白かった、またやってみたい」、「最初はできなくていやだったけど、やっていたら動けるようになってきてうれしい、またやってみたい」、「がんばっていたら先生が励ましてくれた、またやってみたい」、そんなふうにこども達の気持ちを変えることができたら、その後の運動や遊びへの取り組みも自然と変わってくるでしょう。そのきっかけづくりをするのが、周りの大人であり、先生方の役割でもあると考えます。

 ある学校では、家庭学習のしおりと一緒に家庭でできる運動のしおりを配布し、こども達の自主学習カードに記録を記入できるようにし、継続して運動することを認め励ますといった取組をしています。また、ある学校では、グラウンドにラインが等間隔で引いてあり、それを両足ジャンプで連続して跳び越えてから、自由遊びに入るようにしているそうです。登り棒の上の方に鈴をつけておいて、それをこども達が登って触ってくるような場の工夫をしている学校もあります。入り口は様々ですが、そういったちょっとしたきっかけで、こども達の運動習慣が継続することにつながっていくのではないでしょうか。

 先生方が普段していることかもしれませんが、その子なりの「できた」を認め励ましてあげること、真摯に取り組み継続している姿を褒めてあげること、ちょっとした運動のきっかけをつくってあげること、そういったことが運動習慣に影響を及ぼし、ひいては体力の向上や健やかな体づくりにつながっていくと考えます。

筑波大学准教授 三田部 勇
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