Vol.138大切だからいつかどこかで…では遅い金融教育②
金融教育のさらなる充実を実現するには?

 これまで特定の教科で、問題意識をもつ教師が取り組んできた自己実現と社会改善をめざす金融教育を、学校教育全体で展開するには何が必要でしょうか。先ずは校種や教科を問わない教師の金融教育への理解と、教育課程においてその位置づけを見通せるカリキュラムが必要になります。このカリキュラムについては、金融経済教育推進会議の『金融リテラシー・マップ』が参考になるでしょう。金融教育で年齢層及び分野・分類ごとに育成したい金融リテラシーが示されているので、それを参考にしながら教科や総合的な学習の時間等の年間指導計画を検討し、各学校の教育課程を改善することができます。

 金融リテラシーとは、金融教育の観点から見た資質・能力であり、学習指導要領に示された各教科等の目標・内容と関連付けながら、それを育む授業づくりを進めることが具体的な作業課題となります。知識の理解に止まらず思考力・判断力・表現力等の資質・能力を育成するためには、学びの質が問われることになるため、金融教育においても授業が説明的な指導から主体的で対話的な学習へとリニューアルされなければなりません。

 授業のリニューアルは、持続的なカリキュラムマネジメントによって可能になります。金融教育のマネジメントでは、特に各学校の教師が学年や教科を超えて展開されるその授業について理解し、教育課程上での縦・横・斜めの繋がりを意識することが重要でしょう。ともすると学年や教科に閉じこもりがちな現状では、金融教育の学習に継続性が期待できず、積み重ねによる学習効果も望めないからです。多くの教師に意識されていなかった金融教育を発展させるには、実践に基づく集団的なカリキュラムの評価と修正が不可欠です。

 因みに道徳では、子どもの生活がお金と密接に関わっていても、今までお金を取り挙げた学習は重視されていませんでした。例えばお金は大事であるが、自分たちにはそれよりも大事なものがあることを実感するためには、お金の教材化も必要になります。人間の生き方を考える道徳科の授業づくりでは、お金の教材としての可能性を再検討すべきでしょう。また、個々の自立が経済的な自立なしには不可能なことからすると、特別支援教育における金融教育をどのように充実させていくかも大変重要な課題となっています。

 具体的なお金の話を避けてきたのは、家庭教育も同じではないでしょうか。各家庭で家計のことを子どもと相談したり、発達に応じて家族イベントの計画を立てさせたりすることが、学校教育と連携して金融教育を充実させることにぜひ注目してほしいところです。

東京学芸大学教授 大澤克美
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