CREDUON

Vol.125現代の子どもの食生活③
食事と心の関係について

 昨今、子どもの偏食に悩む保護者の方も多いと思います。ある研究では、野菜など健康的であっても子どもが好まない食物に対して、それを食べたらごほうびをあげたり、力づくで食べさせようとしたりすると、結果的により嫌うようになり、ジャンクフードなどの健康的ではない食物を好むようになる危険性があるとしています。そのため、保護者は、短期的な効力を期待するよりも、気長に温かく見守る必要があるとしています1)。

 また、ある研究では、幼児と大学生に食物への好き・嫌いを調査し、その理由も尋ねました。幼児は、嫌いな理由として、苦い、にゅるにゅるするなどの感覚を最も多く挙げていたのに対し、大学生では、感覚以外にその食物にまつわるイメージや思い出を想起していたといいます。また、昔嫌いだった食物が、楽しい出来事を契機に好きになったという回答もあったとしています2)。

 筆者が勤めていた定時制高校で、父の食事のしつけが厳しく、何分以内に食べなければならない、食べ方や箸の持ち方など逐一指導され、嫌いな食べ物を残そうとしたときにむりやり口の中に押し込まれた体験がトラウマとなり、食べることが怖い、そして、人と接するのが怖い、やがて学校が怖いと、不登校になってしまった生徒もいました。どのような文脈の中で食べさせてきたのかが、その子の心をどう育ててきたのかということと深く関係していると感じました。また、家庭の問題を抱え、拒食症に悩んでいた生徒が、クラスメートに愛の告白をされた後、行動も積極的になり、食べる量やレパートリーも増えていったということもありました。思春期の子どもにとっては、たとえ、家庭に問題があっても、認めてくれる仲間がいることで、心の支えを得て劇的に変貌し、結果、食べることへの問題を解決していく例も見てきました。また、幼稚園で勤務した際には、入園したてには不安で昼のお弁当を食べられなかった幼児が、次第に先生との関係を紡ぐことでお弁当が全て食べられるようになったり、友達との関係を紡ぐことで食べられるレパートリーが増えていったりする様子も多々見てきました。

 どうやら、心の成長と食べる種類や量には深い関係があるようです。子どもがさまざまな楽しい場面や素敵な出会いの中で、おいしく食べる経験が大事であり、そのことで心が成長し、さらに食べることに積極的になるのだと思います。

東京学芸大学准教授 佐見由紀子
参考文献
1)今田純雄編『食べることの心理学―食べる、食べない、好き、嫌い』有斐閣選書、2014、117-120
2)長谷川智子、今田純雄、坂井信之「食物嗜好の発達心理学的研究 第2報-食物嗜好理由」小児保健研究、2001、479-487
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