昨今、様々な保育施設が乱立し、保育の質の低下が問題視されています。乳幼児期の保育において「生きる力の基礎」を育むために大切にすべきこととは、先生の言うことを聞く子を育てたり、早期教育をしたりすることでは決してありません。自分のしたい遊びを見つけてとことん取り組めるように援助し、子どもの「主体性」を育むことが重要となります。乳幼児の思考は未分化であり、乳幼児の発達は心身の諸側面が相互に関連し合い、多様な経過をたどって成し遂げられます。だからこそ、乳幼児にとって主体的に取り組める活動とは、教科学習のように細分化された活動ではなく、総合的な活動である「遊び」なのです。
幼児期に文字や数を教えないと、小学校に入学してから子どもが苦労するのではないかとの考え方もあるでしょう。しかし、本来、幼稚園や保育所では、友達の名札の文字を読む、カレンダーを見るなど、子どもが日常の中で文字や数に触れられる環境を用意することで、文字や数への関心を高めることを大切にすべきです。保育者がとりたてて文字を教えることより、「自分でも読んでみたいな」と思えるよう、子どもの興味関心に合った絵本をたくさん読んで聞かせたり、子どもの求めに応じて郵便屋さんごっこのような遊びを援助したりするなど、文字への関心を高める活動の展開が先決です。その経験の積み重ねが、「自分で本を読みたい」「ぼくも手紙を書いてみたい。文字が書けるようになりたい」といった学習意欲へとつながります。子ども一人ひとりが遊びの中で出会った物事に興味関心を示し、心を動かされる豊かな経験ができているのかという視点で、保育環境を計画的に見直す必要があります。
また、小学校以降の学びの基礎となる、友達との協同的な遊びの中での学び合いが、いま重視されています。保育の中でも、自分の考えを話したり、友達の意見を聞いて自分の考えを修正したりする等、コミュニケーション力を育む場づくりが求められているのです。