Vol.001教育困難校の今①世界はわからないことだらけ「なんでだろう?」がはじまりだ

2014.11
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 東京学芸大学では、北海道教育大学、愛知教育大学、東京学芸大学、大阪教育大学の各イニシャルを示すHATOプロジェクト※1という連携プロジェクトを行なっています。各大学で多種多様なプロジェクトを進めていますが、その中に東京学芸大学HATO教育環境支援プロジェクトがあります。

本プロジェクトでは、地域の様々な教育資源と連携した「総合的な教育アプローチ」による、「学習多様性(進学的学力に一元化しない学びの価値付け)」を創出することで、教育的課題をもった小学校・中学校への一体的なサポートモデルを構築することを目的としています。

 活動の特徴としては二つあり、一つは学習支援のオリジナル動画教材(数学・英語)とプリント教材をウェブサイト※2からダウンロードできるように作成し、公開・活用を行なっています。

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 現職の先生の多忙さは広く知られていますが、本プロジェクトで関わるような、ある種の困難な状況をもった学校の先生は、生徒指導や各種連絡・記録・確認など、業務量も多くなり、その結果、思うように生徒と関わる時間が持てなというサイクルになってしまう傾向があります。そのような中では、生徒・児童の広い学力分布に対応するような学習指導は非常に困難となります。

そこで、基礎・基本となるような内容について、東京学芸大学の学生が動画解説することにより、「あと一歩」背中を押してあげたい子どもたちへの学習機会を広げる活動を行っています。

 また、動画教材を用いることは、そこに関わる人材に専門性を求めないことにもつながります。その結果、子どもたちの学習機会をより広げられる可能性があります。学校外の支援人材を地域の教育資源として捉え活用することにより、学校支援の幅も広がるのではないかと期待しています。

 また、このような教材作成を行いながら理解に時間を要する子どもたちとの深い関わりは、教員養成過程にある学生たちに代えがたい経験を得る機会にもなっていると思っています。

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 二つ目は、「OFF SCHOOL(オフスクール)※3」と呼んでいる放課後活動です。継続的な学習の基礎となる「学びの意欲喚起」に焦点を当てた学習の場として取り組んでいます。遊びやものづくり、企画などを通じて、交流と学習する態度の形成を図っています。そのような「コト」を通じた取組を通して、学校教育と社会教育・生涯学習活動との橋渡しを行ない、地域と学校との交流をさらに深め、多世代間の交流の中で育む「学び」の実現をめざしています。

東京学芸大HATO教育環境支援プロジェクト
柏原 寛
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