健康観察は、子どもたちのその日の健康状態を把握するために、毎朝学級担任によって実施されていますが、免許制度の関係上、健康観察の仕方を知らずに学級担任になる教員もいるのが現状です。そして実施率そのものも、小学校96.4%、中学校92.3%、高等学校54.3%となっており、高等学校での実施率が非常に低いのが特徴です1)。高等学校は授業ごとの出席数が各教科の単位取得の要件となるため、授業ごとに出欠はとりますが、出欠に重きが置かれるため、“健康状態を観察する”という視点が抜けてしまいがちです。また、小中学校でも、形式的には行われていても、欠席者の印をつけるだけだったり、保健委員に行わせて、教師は別の仕事をしているという姿が見られたりすることもあります。
しかし、中央教育審議会答申では、健康観察の重要性が述べられており1)、「教職員のための子どもの健康観察の方法と問題への対応」2)には、その目的や活用方法が紹介されています。
健康観察の目的と活用方法は、表1のとおりです2)。目的の③を意識して、健康観察を実施している学級担任は少ないのではないでしょうか。子どもにとって、教師の働きかけは非常に大切です。ぜひ子どものうちから、“自分自身の健康を自分でみていく”という視点を持たせてほしいと思います。そのために例えば、「みんな月曜日はよく具合が悪くなるけど、前の日はどんな生活をしていたのかな?」など、健康観察の結果と、生活習慣を結び付けた話題を取り扱うなど、健康観察の結果を生かした健康教育を行うことなどができるでしょう。これは活用方法④にも通じます。
また、実際に養護教諭はどのように健康観察を活用しているのか、活用方法の①、②から考えてみましょう。
例えば子どもが欠席した場合、養護教諭は欠席の理由だけでなく、欠席日数、観察結果、別の学級を含めた他の児童生徒の出欠動向等を見て、感染症だけでなく、心因性かどうかも考慮します。そのため学級担任に、病院受診の有無やその結果、家庭での様子等、詳細について尋ねることもあると思います。学級担任は、こうした養護教諭が注目しているポイントに注意することで、子どもの抱えている問題を早期に発見できる可能性があります。
また「体調不良」という欠席連絡は、感染症ではなく、心因性の場合もあるので、その背景を考え、詳細を聞くようにするとよいでしょう。ところで、欠席日数は何日目から要注意でしょうか。小学校では、保護者が大事をとって多めに欠席させる場合もありますが、それでも3日連続の欠席は要注意といえます。2日連続で欠席した時点で注意し、子どもの様子をよく保護者から聞き、養護教諭と情報を共有するとよいでしょう。
【参考文献】
1)中央教育審議会答申:「子どもの心身の健康を守り、安全・安心を確保するために学校全体の取組を進めるための方策について」.H20.1.17
2)文部科学省:「教職員のための子どもの健康観察の方法と問題への対応」.H21.3