Vol.182ユニバーサルの視点を大切にした体育授業
-さいたま市立常盤小学校での校内授業研究会から-①
「運動が苦手な児童や運動に意欲的ではない児童」について考える

2020.05

 今年度、小学校学習指導要領が全面実施を迎えました。今回の改訂にあたって、運動やスポーツが好きな児童生徒の割合が高まったこと、体力の低下傾向に歯止めが掛かったことなどが体育科における成果として示されました。一方で、運動する子供とそうでない子供の二極化系傾向が見られるといった課題も指摘されました。

 全国体力・運動能力、運動習慣等調査(スポーツ庁)によると、体育の授業に対してマイナスイメージをもつ児童の多くは「小学校入学前から体を動かすことが好きではなかった。」と回答しています。また、中学校の調査において、「中学校入学前から体を動かすことが好きではなかった。」と回答していることからも、就学前に体を動かすことが嫌いな状況を、小学校の体育授業で変えることができず、運動に対する肯定感が高まるような実践が十分に図られていないことが課題として考えられます。

 また、小学校学習指導要領解説体育編(平成29年7月)においても、生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現する資質・能力の育成に向けて、運動が苦手な児童や運動に意欲的ではない児童への指導等の在り方について配慮する必要があることが挙げられています。つまり、全ての児童が楽しく安心して運動に取り組み、成功体験や達成経験を多く味わうことができる体育授業の実践がこれからの体育授業において必要不可欠であると言えます。

 好き嫌いや得意不得意は当然、だれにでもあることですが、理由が一体どこにあるのか気になりました。実態調査をしてみると、今行われている授業が、運動にマイナスイメージをもつ児童にとって難しく、体育授業において最も大切な、運動の楽しさや喜びを味わうことができない、「負のスパイラル」とも言える状態にいることが分かりました。

 そこで、「やさしい設計」や「合理的な配慮」を軸としたユニバーサルの視点を踏まえた授業改善に取り組むことで、児童に「わかってできた」経験を十分に味わわせ、運動に対する肯定感を醸成させたいと考え、実践に取り組みました。

さいたま市立常盤小学校
大澤 諭
pdfをダウンロードできます!