Vol.203「学校から職場への移行期」の教育を考える①
日本のキャリア教育・欧米の職業教育

 「キャリア教育」という文言は、1999年の中央教育審議会において初めて登場します。2004年には「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」による報告書が出され、児童・生徒・学生に対して「自己と他者や社会との適切な関係を構築する力を育て、将来の精神的、経済的自立を促していくための意識の滋養と豊かな人間性の育成」が必要と提言されました。ここではキャリア教育と職業教育はまだストレートに結び付けられていませんでした。

 ですがその後、2008年の中教審答申で「職業指導(キャリアガイダンス)を適切に大学の教育活動に位置付けることが必要である」と提言されました1。筆者はまさにその年、文部科学省による事業「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」に採択された「東京学芸大学のキャリア学修支援事業」に携わることになりましたが、当初「キャリア教育とは、いったい大学で行う教育なのですか?」という疑問をしばしば投げかけられたものです。それまで、日本の学校教育の範疇では、専門高校などを別にすれば、職業教育は一般教育に直接結びつかないものと考えられ、「職業能力の開発」は就職後の企業内において行われると理解されていたからです2

 ヨーロッパ諸国に目を向けてみると、職業訓練は教育の中で体系化されています3。フランス・スウェーデンでは国家が主導して職業訓練制度を強化しています。例えばフランスでは、「職業訓練」の場を学校教育に求めることができ、学位や職業資格は公式に格付けされ、そのポストや賃金は連動するものとして社会的に認知されています。一方で、ドイツ語圏・オランダ・デンマークでは、企業間コーディネイションや労使協調により、公的教育内での職業訓練が発達しています3(図4参照)。

 他方、アメリカやイギリスなどの英語圏では、ヨーロッパと異なり、国からの支援は期待できず雇用保障も低いため、自己資金による高等教育への進学を通じて技能を獲得していきます3

 次回は、アジア諸国と比較してキャリア・職業教育について考えていきたいと思います。

[引用文献]
1永作稔・三保紀裕 [編](2019). 『大学におけるキャリア教育とは何か』 ナカニシヤ出版
2中上光夫 (2007). 「フランスにおける「「職業訓練」と職業資格」, 『国際地域学研究』, 10, 47-60.
3山内麻里 (2019). 「各国の教育訓練システムの特徴」, 『欧州の教育・雇用制度と若者のキャリア形成』. 白桃書房
4OECD (2020). Participation of 15-24 years-olds in vocational education training, by level of education, Education at a Glance, DOI: https://doi.org/10.1787/69096873-en

産業能率大学 准教授
番田清美
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