Vol.027子どもと野外活動③成功の秘訣「グリット」をキャンプ野外活動で伸ばそう!③

2016.01
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【ポイント2:結果を褒めずに努力を褒めよう】
 子どもが何かにチャレンジして達成した時に褒める機会が多くなるでしょう。褒めて伸ばすということはよくいわれていることです。褒めることによって脳のスピンドルニューロンが伸びることが分かっています。スピンドルニューロンは、幸せを感じると伸びる神経細胞で、長い分だけその人の持つポジティブな感情や幸福感が強くなると言われているのです。ポジティブ感情は、言わずもがな、継続することの原動力となるものです。

 一方で、褒め方には注意しなくてはいけないことも研究でわかっています。褒める時は、才能や結果ではなく、努力やプロセスを褒めること。その子の持っている才能や結果を褒めるとその時は気持ち良くなりますが、その後、失敗を恐れてチャレンジや努力しなくなる傾向となりがちなことが分かっています。例えば、テストの点数(結果)を褒めたり、頭いいね(才能)などと褒めたりするのではなくて、一日も休まず勉強してきたこと(努力・プロセス)を「がんばったね」と褒めてあげることが大切です。

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【ポイント3:一日の終わりには共感~振り返り~の時間を(前半)】
 「シェアリング(振り返り)」、特に共感・感動体験を他者と共有することの大切さは、昨今よく言われています。では、なぜそれが大切なのでしょうか。まず、人と分かち合うことで、自分と他者との考え方の相違に気づくことで自己認識・理解が深まります。それから、体験を共有して分かち合うことが、「基本的自尊感情」を高めることにつながると言われています。「自分を大切に思う気持ち」が自尊感情です。その中でも「今の自分でいいんだ」という自己肯定感や自分を好きでいる気持ちである基本的自尊感情は、生きていくうえで一本の芯になるもので、子どもたちが成長していく土台となるものでしょう。

 また、子どもたちが自分で考えたことを言語化することで、日本人が苦手だと言われている「考えを他者に発信すること」の練習にもなります。考えたことを言語化することで、行動に結びつきやすくなるという利点もあります。言葉にすることが、キャンプで体験したことや気付いたことを日常生活で具現化するための架け橋になるのです。ですから、いろいろな体験をして、仲間や家族と会話をして分かち合うことが大切なのです。
東京学芸大学准教授
小森伸一
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