Vol.142AIと教育⑦
参加者と一緒に「AI×未来の教育」を考える

2019.03

 第2回EDUAI(AI×教育プロジェクト)シンポジウムでは、共同研究の事例紹介に引き続き、シンポジウム参加者の皆様と共に「AI×未来の教育」に対する考えをより一層深めるために、「AI×未来の教育」に関するフロア参加型対談を行いました。今回は、そこで話された内容を簡単に紹介します。

 対談では、文部科学省初等中等教育局教育課程課教育課程企画室室長の白井俊氏と東京学芸大学の松田恵示副学長が登壇し、東京学芸大学の南浦涼介准教授による進行のもと行われました。

 松田副学長より以下の項目について、まず、白井氏へ質問がされ、それぞれ次のような返答がありました。

  • ○今回のシンポジウムの内容について
    学校の先生方は、学校に現状で十分なICT環境がないことやAIが先生の仕事を奪うなどの懸念も抱いている状況ですので、シンポジウムの事例紹介で報告されたような大学・企業・学校現場で協働したAI×教育に関する研究・実践事例を積み重ねることが、非常に重要なことであります。
  • ○「Society 5.0」と教育の関係について
    「Society 5.0」において必要とされる能力は、新しい力ではない、読解力や思考力などの学校現場では伝統的に大切にしてきた基盤的な力です。ただ、AI社会になると、アルゴリズムなどがクローズアップされてきて、誰もが数学的な素養を持っていることが必要である時代となると思います。
  • ○教育者の在り方について
    AIの利活用により、先生にとっては、教育の質の改善や働き方改革につながるものがあると思います。特に、特別支援の対応を行う際に、過去の事例などのビックデータを用いたAIが活用されると、先生は楽に対応できるなどの事例があります。
  • ○アダプティブラーニングについて
    知識の蓄積と思考は往還関係にあり、その知識の蓄積の一部にアダプティブラーニングができることがあります。ドリル的なものについては、アダプティブラーニングが適用できることが多いです。今後、学校の宿題の出し方や授業の設計などは変わっていくと思われます。
  • ○児童・生徒への個別対応について
    現在、外国人の児童・生徒が非常に増えているので、母国語での対応については、AIなどのテクノロジーによって対応していく必要があると思われます。
  • ○ICT環境整備について
    現状、各自治体で、あまり先生方のニーズを反映したようなICT環境整備への予算の使い方になっていない状況です。今後は、先生方のニーズをしっかり把握して、各自治体にそれをお伝えして、ICT環境整備への予算の使い方を考えてもらうようにします。
  •  なお、上記の対談中は、シンポジウム参加者への問いかけやグループディスカッション、質問の受付などが行われ、文字通りフロア全員が参加しながら進められました。

     今後もEDUAIではこのような活動を続け、未来の教育の在り方を探究していきます。その成果は適宜報告していきますので、ご期待ください。

    東京学芸大学学長補佐・准教授 中野幸夫
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