みなさんはSTEM(ステム)という言葉をご存知でしょうか?
STEMとはScience(科学)・Technology(技術)・Engineering(工学)・Mathematics(数学)の頭文字をつなぎ合わせた単語で、これらの分野を統合する新しい教育分野のことを指しています。最近話題のプログラミング教育なども含んでおり、今大変注目を浴びている分野です。
そこで今回は、東京学芸大こども未来研究所が実施した「風力発電装置をつくってみよう」というSTEM教育プログラムの実践の様子をご紹介したいと思います。これは、風力発電装置をつくるというモノづくりの体験を通して、風とプロペラの回転の関係やギアのしくみについて学ぶとともに、それらを活用してオリジナルの風力発電装置をつくるというプログラムで、教材にはGIGOブロックの「ラーニングラボ」シリーズを使用しています。
まずは、班ごとに組み立て手順書を見ながら風力発電装置をつくります。パーツを間違えたり、ブロックをはめる場所が違ったり。それじゃないよ、こうなってるよ、とワイワイガヤガヤ組み立てていきます。早い班は15分ほどで出来上がり、いざ扇風機の前に。うまく回るかな?緊張の一瞬です。扇風機のスイッチをオンにすると…これがなかなかうまくいかないんですね。プロペラが全然まわらなかったり、回ってもLEDライトがつかなかったり。さて、ここからが本番です。扇風機の前で、講師が生徒に声をかけます。「どうして回らなかったんだろう?」「LEDが点灯しないのは、なんでだろう?」すると、児童たちに一気にスイッチが入ります。「羽がぶつかってる!」「扇風機に近寄ってみたら?」「コードが逆じゃない?」「羽に空気があたって抵抗が大きいんだよ」。いろいろな気づきが噴出してきます。そのころには、先生なんて眼中外。あーだこーだいいながら作業机に戻って、手を動かしながらの作戦会議です。
改良した装置で再チャレンジ。やったー!となる班もあれば、プロペラがブンブン回るようにはなったけどLEDがつかないぞ?という班も。うまくできた班は、モデルチェンジのヒントが書かれたカードをもらい、それを参考に独自の風力発電装置をつくります。
こうした風力発電装置をつくる活動の中で、児童は活動に没頭し、STEMを含む本当にいろいろなことに気づきます。この気づきは、モノづくりを実践し試行錯誤するという経験によって身につく学びの種であり、前回ご紹介した「科学を実践する」ときに役立つ視点を養ってくれるものであるといえるでしょう。では、児童はどのようなことに気づいているのでしょうか。それはいつ気づいているのでしょうか。次回は、児童の気づきを引き出す仕掛けについてご紹介したいと思います。