Vol.044子どもの貧困と学校③包摂型社会と学校

2016.06
44_pic_01
東京学芸大生による放課後学習支援教室(B.教育支援モデル開発・検証)

 東京学芸大学では、平成27年度より文部科学省特別経費「附属学校と協働した教員養成系大学による『経済的に困難な家庭状況にある児童・生徒へのパッケージ型支援に関する調査研究プロジェクト』」に取り組んでいます。社会・経済的に困難な環境にある子どもたちを、「護る」とともに「確かな力を育む」ために、実践的教育課題の研究を担う附属学校と協働して、教員養成大学・教育系学部における効果の高い支援の取組のモデル開発を行うとともに、教員・教育支援者養成の質を高めることが目的です。
 このプロジェクトでは、以下のような研究開発を行いながら、「学校教員」をキーパーソンにした多様な人々の協働による子どもたちへの包括的支援のシステムの実践的開発と検証を進めています。

A.調査と分析・理論提示
 取組に関わる調査と分析を行い、評価やPDCAサイクルの実質化を図るとともに、成果の活用を促進していきます。

B.教育支援モデル開発・検証
 学校教育や福祉での働きかけの場面で「教育支援活動」を行うことで、その働きかけを強化、高度化したり、新しい子ども支援の活動モデルの開発を図る取組を実施します。

C.カリキュラム(課程内/外)開発と検証
 学生による教育支援活動を、学生自身の専門的・実践的な学びと、現場での支援の質と量の担保を実現する「サービスラーニング(互恵性のある取組)」として組織化、持続可能化させます。

D.「ダイバーシティ教育」のプログラム開発と教員研修の開発・検証
 当事者だけでなく、当事者を包む集団・地域・社会の形成(特に経済的困難性による排除に向かわない社会=包摂型社会)を図るための教育のあり方を、附属小・中学校を中心として研究し、教育プログラム、研修を開発・検証します。

E.放課後支援モデルの開発と検証
 附属学校、大学、地域が連携して放課後児童クラブを設置、運営することで、地域における子どもの放課後の生活の質を高めるプログラムの開発や、地域貢献の度合いを高める放課後児童クラブ運営を研究開発します。
44_pic_02
東京学芸大学放課後児童クラブの様子(E. 放課後支援モデルの開発と検証)


F.教育委員会・学校との連携協働体制の構築
 子ども支援のための取組の方策や、ネットワークづくりに関わっての組織づくり、潤滑な運営を整えるために、教育委員会や学校現場との連携協働体制を構築します。

G.ガイドブックの作成と普及
 プロジェクトの具体的な成果に基づいた有効な支援モデルを総合化・パッケージ化し、他の学校や地域にも展開できるように、「ガイドブック」としてまとめます。また、ガイドブックから実践的な取組がさらに促進されるように、研修講座の開発とその検証を行い、取組成果の普及を、研修講座を通して図ります。 「学校」や「教育」というところから、「子どもの貧困」という社会的課題に立ち向かっていく。日本において、こうした取組はまだまだ始まったばかりです。東京学芸大学では、支援の取組やネットワークを形成していく中で、すべての子どもが安心した生活を送りながら、学習を通じて様々な可能性にチャレンジできるような社会をつくることを目指して、今後も実践研究を進めてまいります。より詳しい取組についても、プロジェクトHPへ。
(東京学芸大学パッケージ型支援プロジェクト http://ccss.tokyo/)
東京学芸大学特命助教
田嶌大樹
pdfをダウンロードできます!