Vol.217国際バカロレア教育と多様性

2021.5

○国際バカロレア教育について
 国際バカロレア(IB)教育はジュネーブに本部を置くIB機構が提供する国際的な視野を持つ人材の育成を目的とした教育プログラムです。
 日本国内のIB認定校等の数は161校(令和2年11月30日時点)で、国内の大学入試におけるIBの活用促進、IB教育に対応可能な教員の養成・確保等の取組により、導入が推進されています。

○国際バカロレア教育と多様性
 IB が掲げる使命は「世界各地で学ぶ児童生徒に、人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続けるよう働きかけること」です。つまり、多様性を認め、そこに価値を見出すことができる人材を育成するための手立てが教育活動の随所に見られます。

差別化した指導
 IB校の教師は、特別な支援を必要とする生徒や高い学力を有する生徒等、多様な生徒のニーズを満たし、生徒が個別に適切な学習目標を設定し達成するように、指導を「差別化(Differentiation)」することが求められます。例えば、課題のサンプルを提示する、学習方略の使用を教師が見本を見せることで促すなどの、状況に応じた足場がけや、生徒が理解を示す表現方法を選択できるようにすることが考えられます。
 一般的に、生徒に課題を出す際、同じ形式で取り組ませることが多いと思います。しかし、生徒の理解の度合いを見とることが目的であれば、表現方法は多様であっていいはずです。文章として書くことが難しくても、口頭で話をさせるとすらすらと話すことができる生徒もいます。
 IB校の課題には教科を問わずプレゼンテーション、ディベート、レポート、ポスター、脚本、企画書等、様々な表現方法を経験させています。その経験の中で、自分の強みや弱みに気付き、学習目標を自ら設定し学ぶうちに、次第に自らの能力や状況に適した表現方法を自分で思考し、選択できる段階まで導いている印象を受けます。
 教師が行う指導の中で、生徒の選択の幅を広げることはIB校に限らず、どの学校でも検討していく必要があるのかもしれません。生徒一人一人の「違い」を多様性として尊重される経験を学習の中にも組み込むことができれば、多様性に価値を見出す姿勢を日々の学校生活の中で涵養することにつながるのではないでしょうか。そのヒントがIB教育には散りばめられていると感じています。

広島県立御調高等学校
柴田深月
参考文献
文部科学省IB教育推進コンソーシアム
https://ibconsortium.mext.go.jp/
国際バカロレア機構「国際バカロレア(IB)の教育とは」(2017)
国際バカロレア機構「MYP:原則から実践へ」(2018)
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