Vol.275デジタルとアナログのあいだ①
学校図書館の建築は学びのコミュニティ

2025.04

はじめに
 これから3回にわたって、デジタルとアナログのはざまで揺れながら〈新しいカタチ〉を模索する学校図書館について述べてみたいと思います。第1回は建築・施設設備の観点から広場とICT環境、モノづくりスペースについて取り上げます。

1 広場としての学校図書館
 学校の建て替えが全国で進められています。老朽化や統廃合でその機会を得、義務教育学校と保育園・こども園や公共図書館(1)、ホールなどの複合施設として建築される場合も多いです。学校図書館は校舎のどの位置にどんな機能として設置されるのでしょうか。新校舎建設時に地域住民や子どもたちから意見を聞き、みなで考えるワークショップを数回行って基本構想・計画をつくる場合もあります。結果、学校図書館は子どもも教職員もアクセスしやすく、地域住民も使う、交流の場として設けられるケースもでています(2)。

 文部科学省に「CO-SHA PlatForm」(3)という学校施設設備・活用のための共創プラットフォームがあり、そのトップページや「このサイトについて」のページには教室の延長として多目的につかわれる共同の空間や学校図書館内での対話の様子が描かれています。本棚のある空間でタブレットやノートパソコンを開きながら話し合い、発表して分かち合う―これが21世紀の学校図書館の光景です。欲を言えば、机に開かれた本と積みあがる本も置かれて、端末で得られる情報とどちらも目的に合わせて使いこなしている様子も描いてほしいところでした。デジタルもアナログもその特性に合わせてどちらもつかえる子を育てていく場なのです。

2 教室と同じICT環境を整える
 2020年以降、学校では一人1台端末の教育環境が整えられてきました。学校図書館は電子書籍もオンラインデータベースも使える環境になっているでしょうか。教室でできることは学校図書館内もできるようにしておくことは必須です。電子黒板や大型ディスプレイ、グループワーク用のホワイトボードも置いて、情報やAIとの付き合い方、メディアリテラシーの育成、著作権の学習など、情報教育の領域に学校図書館も積極的に参加していかなくてはならないでしょう。文部科学省で行われている「図書館・学校図書館の運営の充実に関する有識者会議」の第2回(2025年1月11日)において、土屋文代委員から公立小学校図書館で情報活用能力の育成を情報教育主任と実践したことが報告(4)されています。

3 「創作」のための工房―メーカースペース
 先進的な学校や公共図書館には、集めた情報をもとに新たな作品や成果物の創作を行う場として「メーカースペース」(5)や「メディア・ラボ」という名称で工房が設置されています。3Dプリンター活用を含めたモノづくり、デジタル編集も行います。毛糸やビーズ、色画用紙などを揃えるインターナショナルスクールも拝見したことがあります。学校図書館も創作、STEAM教育にも関わる活動の場にもなります。

4 受動から主体的な図書館の活用へ
 今、学校教育が「主体的で、対話的で、深い学び」へと変わってきました。図書館でも従来の静かに読み、受け取るだけの利用から、わくわくするような文化的刺激を受け、人と出会い、対話して、新たに創作して発信するという、利用者の主体的な活動を引き出す場になろうとしています。図は吉田右子氏が紹介する北欧の公共図書館モデル(6)です。日本では学校図書館の方が、実現が早いのではないかという吉田氏の意見(談)に私も同感です。にぎやかな活気ある学校図書館を作りませんか。

成蹊大学非常勤講師
元・東京学芸大学附属小金井小学校司書
中山美由紀
【参考文献】
(1)岡田大輔「日本の公開・併設された学校図書館」(2025-03-17確認)
(2)永明小学校永明中学校建設基本構想・基本計画策定委員会(2025年3月25日確認)
(3)「CO-SHA PlatForm」(2025年3月25日確認)
(4)文部科学省「図書館・学校図書館の運営充実に関する有識者会議(第2回)における主な意見」P3-4(2025-03-17確認)
(5)メーカースペースの例:
https://library.city.urayasu.chiba.jp/service/fabspace/index.html
(6)吉田右子「自己との対話・他者との会話 21世紀のデンマーク図書館がめざすもの」『図書館雑誌』109/4,2015年4月,p220-222
吉田右子「ここは図書館だよ。なんでおしゃべりしないの」(動画)『公共図書館に学ぶ(吉田右子・吉成信夫対談 2024年)』(先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース)(2025年3月26日確認)
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