【キャンプは“創造的チャレンジ道場”】
電気・ガス・水道が当たり前のようにあって機械(自動)化の進む便利な生活を享受する私たち現代人。一方で、身近な自然は減少し、それに呼応するように自然やそこに息づく生物たちへの意識や直接的な触れあいも少なくなってきている現実があります。そんな多くの私たち日本人にとって、自然度の高い場所で実施される野外活動ほど、非日常的な環境での不慣れな活動となるのです。いわば、日常には普通にあるものが無い、出来ない不便な活動および生活です。
この点から考えると、様々な野外活動の集合体となるキャンプ生活は、非日常的で不便な「無い」生活です。しかし、この「非日常性」「不便」「無」ということが、私たち人間の潜在力を引き出し発揮していくために大切なのです。普段と違うから新たな取り組みをすることにつながり、不便だから頭・体・心を使って何とかしようと工夫・努力し、そこに無いから自分で、または他者と協力して創り出す機会となります。一言でいえば、そこは“創造的チャレンジ道場”となるのです。
そして、前述「グリット」は、その「チャレンジする=努力する」を根気強く持続する力です~心持ちと実践。チャレンジの場を多く有すキャンプ活動においては、以下いくつかのの指導上の工夫によってその「グリット」の向上に寄与できると考えられます。
【ポイント1:手を出さず見守る】
まず一つには、子どもたちが何かに取り組む機会=チャレンジすることをできるだけ多く持てるように配慮することです。先述したように、非日常的な場となるキャンプでは、そこでの体験の一つ一つが、子どもたちには大なり小なり色々なチャレンジとなります。しかし、指導者はつい効率だけを考えて「あーだ、こーだ」と口や手出しをしがちとなります。そうなると、子どもたち自らが考えやってみる場をつぶしてしまうことになってしまいます。時間がかかるかもしれないですが、ちょっとしたことでも子どもたち自身にやらせてみることです。
チャレンジといっても大げさに考えるのではなく、スモールステップ=小さい目標を意識してとにかく一歩を踏み出す~トライする~ことが大切となります。失敗してもかまいません。失敗だと思うから失敗になるだけで、失敗は次なるチャレンジの課題があるだけのことです。小さい目標でも達成をすることによって、「やった! できた!」の達成体験ができ、脳内物質のドーパミンが放出されます。ドーパミンには学習の反復効果があるといわれ、それゆえこの次もまたやってみようというチャレンジの好循環ができます。