「社会に開かれた教育課程」の実現は、2020年度以降、小学校を皮切りに実施される新学習指導要領によって、これからの学校教育が目指す方向として明確に打ち出されました。これは、教員だけが頑張る学校教育からの脱却を意味しており、「家庭・地域との連携・協働」によって期待される多様な価値や体験を子どもたちの利益としてデザインし、学校教育の目指すところを(家庭や地域を含む)社会と共有していくことが意図されています。
地域と学校の協働については、既に全国各地での積極的な取り組みが見られますが、本稿では東京都教育委員会の取り組みから「都立高校生の社会的・職業的自立支援教育プログラム事業」を紹介します。
今年で7年目を迎える「都立高校生の社会的・職業的自立支援教育プログラム事業」は、東京都教育委員会が平成24年2月に策定した「都立高校改革推進計画・第一次実施計画」中に掲げられている目標Ⅱ「変化する社会の中での次代を担う人間の育成」を実現するために、平成25年度から開始されました。この事業では、「企業や大学、若者支援に関する専門知識や経験を有するNPO等との支援団体と連携し、都立高校生が社会や職業について、実感を持って理解しながら、将来社会人・職業人として生活していくために必要な能力等を身に付けることができる教育プログラムの実施」を趣意として、これまでに約60の支援団体の協力のもと、主に出前授業形式でプログラム実施がされています。100以上の教育プログラムには、働くことの意義や役割の理解に関する内容、将来設計に関する内容、学ぶことの意義を考える内容等があり、都立高校はこの豊富なプログラムから、学校の実情や生徒に身に付けてほしい力、外部人材でなければ提供できない学び等を総合し、プログラムの実施希望を出すことができます。
一般に出前授業の課題点として、プログラム実施団体と学校現場との十分な意思疎通を経たプログラム実施が容易ではないこと、単発実施に留まらず継続的にプログラム実施ができるための団体と学校現場の信頼関係の構築が容易ではないこと等が挙げられますが、学校によっては年間計画に出前授業を戦略的に位置づけ、生徒の学びが連続していくための事前事後のデザインを工夫している例もあります。次稿では、実際に都立高校にて出前授業を実施している団体に筆を譲り、その実態を紹介いただくことで、「出前授業を活用する」という「社会に開かれた教育課程」の実現に資するヒントに代えたいと思います。