Vol.161「オリンピック・レガシー」①

2019.10

 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催まで1年を切りました。
今からとても待ち遠しいです。私はラッキーなことに「水泳」「ハンドボール」「柔道」を観戦できることになりました。特に日本のお家芸である「柔道」は、女子70キログラム級、男子90キログラム級の決勝のチケットなので大変楽しみです。

 自分のことはさておき、世界的なスポーツの祭典が自国で開催されることで、大きな盛り上がりが予想されます。町も大きく変わっていくでしょうし、様々な経済効果も期待できます。そして何より国民のスポーツへの関心が高まることは、豊かで健康的な生活を送っていく上でも良いことだと思います。

 ところでこの文章を書いている現在(令和元年9月)は、ラグビーワールドカップ2019開催真最中です。日本代表は世界ランク2位のアイルランドに劇的な勝利を収めました。
この後の活躍も楽しみです。今後、ラグビー人気がより高まることだと思います。
 こうした「快挙」が見られ、感動を共有できるのも大きなスポーツ大会の魅力です。

 開催期間中の盛り上がりも当然ながら注目されますが、注目すべきはそればかりではありません。開催後に何が残り、何が語られるのでしょうか。

 オリンピック・パラリンピック開催後に残る有形・無形の社会的な遺産や文化財、そして環境財のことを「2020年東京オリンピック・レガシー」と呼びます。
 前回の東京オリンピック(1964年開催)の後も人物、有形、無形の遺産がたくさん生まれ、今の時代にもつながっているものがたくさんあります。

 例えば「東海道新幹線」や「首都高速道路」の整備をはじめ、カラーテレビによる放送や衛星放送によって世界にライブで競技が伝えられたのも、このときが初めての試みでした。また、非常口やトイレのマークで有名な「ピクトグラム」も競技種目や会場の案内としてお目見えし、今や世界どこでも見られるような「世界的なレガシー」になりました。

 競技の快挙もたくさんありましたが、その1つ、女子バレーボールの金メダルは歴史的な快挙でした。選手たちは「東洋の魔女」と呼ばれ、闕所戦の視聴率は66.8%になったとのことです。その後、バレーボール人気が起こり、小学校や中学校の体育館で行われる「ママさんバレー」が登場しました。

 主婦がスポーツを楽しむという概念も今や当たり前ですが、ここにきっかけの一つがあり、生涯スポーツの先駆けとなったことを考えると、競技者が残した文化的なレガシーと言えるでしょう。

東京学芸大学 健康・スポーツ科学講座 教授
鈴木 聡
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