様々ある外部連携の方法でも、常盤小学校の研究授業で注力されている「教師や外部の人が一緒に授業」を作るという新しい試みの中で、「ワールドカフェ」という手法が取られていました。今回は、この「ワールドカフェ」とはどんな手法であるのか?また、どんなメリットがあるのかについてご紹介していきます。
今回の研究授業に実施にあたり、常盤小学校が「ワールドカフェ」を採用した背景には、研究目的の一つに「教員の意識改革」があったことです。これは、従来の授業作りの形式である、先輩教師から若手教師への指導に加えて、参加教員全員が自分の意見を出し合うこと、また、そこに外部人材も参加することにより、授業への多角的な視点でのブラッシュアップと、それぞれが授業に対する当事者意識を持つきっかけを生むことが出来ることがあります。
では、この「ワールドカフェ」とはどうような手法なのでしょうか?
常盤小学校では、以下の進め方で実施していました。
(教員、外部人材合わせて20名とした場合)
- 4つのテーマ・課題の違うテーブルを作ります
- 各テーブルに5名で着席をします
- 1ラウンド(10分程度)そのテーマなどについてで話し合い、意見をまとめます
- 1ラウンドしたら、各テーブル1名を残して、それぞれ他のテーブルへ移動します。着席したら2ラウンド目がスタートです。まず、各テーブルに残っている1名が、1ラウンドで話し合ったことをそれぞれのテーブルの新しいメンバーに伝えます。それを受けて、その議論に補強する形で2ラウンド目のメンバーが意見を出し合います。
- 2ラウンド目が終了したら、また1名残して、テーブルを変えます。以下、適宜繰り返し、全員が各テーマを廻ったところで終了
- 最後に各テーブルで出た結論を発表します
このような手法を取ることにより、一つの授業に多くの意見や視点を盛り込むことが可能となります。それだけでなく、積極的な授業作りへの参加姿勢になり、参加した皆が研究授業を作成しているという意識が生まれます。
ただ、上記の進め方で行っただけでは、なかなかそのような結末をむかえるのは難しいです。
そこで、以下のようなルールのもとで「ワールドカフェ」を行うとより充実した時間にすることが出来るとのことです。
[ワールドカフェの7原則]
- 前提条件を設定する
- 何でも言い合える空間にし、意見の否定はしない
- テーマ・課題などをハッキリさせる
- 自分の意見を少しでもいいから言う
- アイデアをつなげる意識を持つ
- しっかりと相手の意見を聴く
- 皆で考えてたことを共有する
これらのルールを意識するとより実りのある「ワールドカフェ」を実施することが可能となるようです。
また、「ワールドカフェ」がどの研究授業にも万能かというと、必ずしもそうではなく、今後に向けての課題も確認されています。例えば、話が広くなりすぎてまとめるに苦労することがあった。多角的な視点を得られたのはいいが、それを一つの授業にしていくとなると集約するのが大変になる時もあるとのことです。このような時には、テーマ・課題が的確であったか見直すことも考えても良いかもしれません。
この「ワールドカフェ」は、1人では考えつかないようなアイデアの授業が生まれると共に、参加者全員の共同作業になるので、全員が授業を自分事に考えるきっかけになるという部分で、これまでとはまた違った新しい可能性を秘めています。
次回は、この「ワールドカフェ」の実施からえられたカフェのパターンをご紹介します。
※本レポートは、「平成25・26年度 中央区教育委員会研究奨励校 研究紀要 研究主題『子どもが生き生きと学ぶ指導の工夫〜外部(大学・企業・地域等)との連携を通して〜』」中央区立常盤小学校(2014)を参考にしております。
NPO法人東京学芸大こども未来研究所研究員
高橋真生
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