Vol.146「日本教育支援協働学会」第1回研究発表大会から①:教育支援協働学を拓く
小学校展覧会「●▲■、おもいのかたち―みえないものをみる-」を創る

 2019年3月2、3日の両日、「日本教育支援協働学会」第1回研究発表大会が行われました。「教育支援協働学を拓く」というテーマにもありますように、次世代の教育の育成に向け、教育をとりまく環境が大きく変わりつつある中で、「教育支援」「教育協働」による新しい実践事例の集積・交流を通し、より充実した実践へとつなげていくことが、喫緊の課題となっており、そうした実践を指導する人材養成のためにも、広く教育学や社会福祉学をはじめとした様々な専門分野の研究を学際的にとりまとめていくことが、今、求められています。そのため、本学会の研究大会は、特定の分野・領域だけではなく、広く教育支援・教育協働に関することを、中長期的なスパンで取り扱っていく予定です。

 今大会は、(1)シンポジウム、(2)ラウンドテーブル、(3)実践研究発表の3部構成。(1)シンポジウムは、昨年2月、6月の記念シンポジウムに続く、第3弾。小学校と社会教育施設(美術館)との協働の取り組みについての紹介でした。


 「小学校展覧会「●▲■、おもいのかたち―みえないものをみる-」を創る―公立美術館、地域住民による子どもたちへの教育支援―」と題して、世田谷区駒沢小学校と世田谷美術館とで取り組んだ、「子どもたちの子どもたちによる子どもたちの展覧会」の実現とプロセスが紹介されました。シンポジウムのコーディネーターで、博物館学を専門とする東京学芸大学教授・君塚仁彦先生から、シンポジウムのねらいと背景の説明があり、世田谷美術館による学校教育支援活動について、同美術館学芸員・東谷千恵子氏より、スライド写真などで詳しく紹介されました。そして、小学生が中心となって実現した展覧会の様子を、世田谷区立駒沢小学校・船本直史先生より紹介がありました。

 今回の展覧会は、発案、企画、広報、実施など、すべて子どもたちが主体的に行動したものであり、小学校、美術館、そして地域の方々、それぞれがそれぞれに支援を行い実現したものであることが強調されていました。展覧会を見に行った誰もがその素晴らしさに感激し、その噂が人づてに伝わり、リピーターの含め多くの参観者が訪れたということです。子どもを中心とした学校と地域の連携の歯車が一つとして空回りすることなく、大きな成果を得ることができたということでしたが、最後のディスカッションでは、やはり何事も全て順調に進んでいたわけではなく、新たな課題も少しずつ見えてきたということも話されていました。


 いろいろな壁にぶつかったとき、学校の上司や同僚、そして地域の方々の協力があって、次のステップへと進んでいくことができ、そういう意味ではとても恵まれていたということを話されていたことが、とても印象的でした。しかし、何事も先行事例を参考に「こうすればいい」と思っていても、いざその壁に立ち向かったとき、それを乗り越えようとしなければ、どんな支援があっても前に進むことはできないと思います。

 今回の取り組みもまた、決して偶然の産物ではなく、子どもたちはもちろん、まわりの先生方や地域の方々が、いっしょになって、壁を乗り越えあるいは壊して前に進もうという強い気持ちを共有していたからこそ、実現できたのではないかと思っています。

国立大学法人 東京学芸大学 教授 木村守
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