前回ご紹介しました「けんQノート」について、今回は私が子どもに渡しているフォーマットの紹介と、それぞれの項目について具体的に子どもたちのアイデアを例示しながら、大切にしたいことについてお話ししたいと思います。
「けんQノート」のフォーマットには、①疑問、②予想、③調べ方、④結果と感想、の4つの項目が設けてあります。
①疑問 →できるだけ日常生活の中から“?”を見つけるよう促す!
「どうしてバスがとまってドアがひらいている時に、しょうめんからバスを見るとかたむいてみえるの?」という疑問を見つけた子がいました。この子はこの疑問を朝の通学路で見つけたそうです。入学してから毎日通る通学路ですから、バスは毎日見ていたはずです。でも、「『けんQノート』のネタはないかな」と意識すると、こういった日常の中から疑問が見つかるんです。
他の項目については子どもたちの発達段階に応じて重要度は変えますが、この「疑問」の項目についてはいつでも変わらず大切にしたい、いわば「けんQノート」の核にあたる部分だと考えています。
他の多くの教科では、単元の中で身につけさせるべき知識が決まっているため、解決すべき問題は我々教師が設定したり、その疑問が子どもから出るように誘導して授業を行ったりすることが多いと思います。しかし、そのような中では、そもそもの問い自体を発見する力はなかなか育ってこないという実感があります。子どもたちの将来を考えても、「欧米に追いつけ追い越せ」ではなく、「国際競争の中でいかに付加価値を生んで差別化を図るか」が求められる現代では、現状の中から表面化していない問題点や疑問を掘り出していく力が大切なのではないでしょうか。
子どもたちにとって「研究」となると、宇宙にまつわる疑問がよく出てきます。そこから興味を持って追究していくこともすばらしいですね。しかし、例えば「なぜ太陽には黒点があるのか?」というような、図鑑や教育番組の中に問いと答えがあらかじめセットになって載っているような事柄を暗記して発表するよりも、先ほどのバスの例のような生活の中から見つけた何気ない問いの方が面白く展開したりします。
他にも、「どうしてかばんは手でもつよりしょったほうがかるいのか?」について調べてきた子がいました。その子は感想に「ずっと思ってたぎもんなのでわかってよかったです。」と書いていました。きっと、ランドセルやリュックサックを背負った時、手で持っていたときのように重さを感じなかった体験を思い出したのでしょう。この「けんQノート」に取り組むことで、日常のちょっとした引っかかりにスポットライトを当てて疑問へと進化させていけることもあるのだろうと思います。
②予想 →しっかり考えて必ず書く!
この「けんQノート」が陥って欲しくないのが、「見つけた疑問をインターネットで調べて終わり」という解決です。インターネットで調べれば簡単にそれらしい答えに辿り着く時代だからこそ、調べる前に今の自分の知識を動員して予想を立てる、つまり「思考」の過程を通ることを大切にしなければいけないと思います。
「どうしてティッシュペーパーは出しても出しても出てくるの?」という疑問を持った子は、予想の欄に「トイレットペーパーのようになっていて、はこの中で切れて出てくるのかな」と書いていました。トイレットペーパーという似たものの仕組みから類推した予想、すばらしいと思いました。
学年や個に応じて「なんとなくそう思う」から「こうだからこう思う」と、既習事項を活用したその子なりのロジックを求めていきたい項目です。
東京都世田谷区立東深沢小学校教諭
木村翔太
pdfをダウンロードできます!