Vol.193子どもの主体性をつぶさないために

2025.04

 「子どもが主体的に学んでいます」という文を見て、皆さんは子どものどのような姿を想像しますか? 「やってみたい」と自分から課題に取り組む姿、静かに黙々と課題に取り組む姿等でしょうか。

 デジタル大辞泉によると、主体的とは、「自分の意志・判断に基づいて行動するさま」とあります。また、「主体性」とは、「自分の意志や判断に基づき、責任を持って行動すること」とあります。だから、子どもが支援ツールを使ったり、教師や友達の助けを借りたりしながら課題に取り組むことは、子どもの主体的な学びです。しかし、主体性は、いつも正しい方向に表れるとは限りません。授業中、先生が指名してくれないといって机を倒す、分からない問題のあるプリントを破く、という行動はどうでしょう。どちらも子どもが自分の意志・判断で行動しています。「主体的」という言葉の意味から考えると、机を倒すことも、プリントを破くことも「主体的」な行為です。

 このような子どもの行動に関して、野口(2017)は、「『主体性』『主体的』を望ましくコントロールすること、コントロールできることにこそ価値があるのである。『主体的』であることに子どもを導く前に、その主体性のあり方、方向性、善性をまず教えるべきなのだ」と言っています(1)。私たちは、子どもが主体的に学ぶことができるように、自分で自分をコントロールし、場に応じて適切に判断できる力を育てる必要もあります。

 人と関わり、社会で生きていくためには、教師主導で学ばせなくてはいけない場面もあるように思います。しかし、教師主導の学習ばかりでは、子どもは学習への意欲をなくし、教師の指示を待ち、自分から行動することがなくなってしまうかもしれません。そうならないよう、私たちは一人一人に応じた目標設定や教材づくり等をして、子どもが主体的に学ぶことができるよう準備をします。

 上岡(2019)は、「子どもが自らする力を身につけるためには、教師が学習中にどういう支援をすればよいかを考えるのではなく、子ども一人で任せても大丈夫な学習設定、環境設定を整える必要があります」と言っています。(2)

 子どもの主体的な学びを支えるためには、すごい労力とエネルギーが必要だと思います。しかし、子供の「やったー」「できたよ」という言葉や笑顔で、それは吹き飛んでしまいます。そして、その笑顔は、教師の自信につながっていくと思います。教師にも、「できた」「やった」の積み重ねが大切です。

富山県氷見市立朝日丘小学校
稲垣 恭子
【参考文献】
1 みんなの教育技術「主体的」の正体を見据えて【野口芳宏「本音・実感の教育不易論」第4回】https://kyoiku.sho.jp>学校経営
2 上岡一世(2019)「特別支援教育サポートBOOKS特別支援教育 新学習指導要領を踏まえたキャリア教育の実践」明治図書
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