2021年の文部科学省の調査では、「学習面又は行動面で著しい困難を示す」生徒が高等学校に2.2%程度在籍していると報告されています(表1)。
1.具体的な指導例
例えば、他者との会話に困難さを抱える生徒が指導対象であるとします。その際、ただ話をするだけではなかなか心を開いてくれず、効果的な指導にならないことが多いと思います。そんな時に、私はよく「サイコロトーク」を行います。サイコロの1~6に呼応したトークテーマを作り、そのテーマについて話をするのです。教員も一緒に参加し、ゲーム感覚で、お互いに自分の趣味や好きな食べ物、好きな歌などを話していくなかで、「自分の意見を伝える」「相手の話を聴く」ということを自然に、楽しみながら学んでいくことができます。
通級による指導の目的の一つに「指導効果の般化」があげられます(佐野,2023)。生徒の在籍する学級で、社会に出た後で、対象生徒にどのような力を身に付けて欲しいのかを考え、そのための指導を行うことが求められます。
2.チームとしての学校
通級による指導は、通級の場だけで完結しません。あくまでも、目的は「指導効果の般化」(佐野,2023)なのです。そのために必要なことは「チームとしての学校」(文部科学省,2015)で対象生徒を支援するということです。担任、教科担当、部活動担当、管理職等に通級による指導の指導内容を伝え、対象生徒の行動変容が見られたら声掛けをし、認めてあげる行動が重要だと考えています。
具体的には、他人の目を見て会話ができない生徒が教員と目を見て会話をした場合、それは正の行動変容だと捉えられます。教員はその場で生徒を褒めてあげてもいいし、通級による指導の担当教員に伝えるだけでもかまいません。担当教員は、次回の指導の際に生徒の行動変容について声掛けを行ったり、指導の効果を確認したりすることができるようになります。
通級による指導は専門家だけで行うものではありません。生徒と関わる教員、大人が一人でも増えること、生徒を認めてくれる存在が一人でも増えることが、最大の支援であると考えています。