Vol.66自然とともにある生活

2025.07

 私は現在、沖縄県の離島の離島に住んでいます。観光地化していないこの島の人口は約1,000人で、保育所、幼稚園、小学校、中学校が各1校あり、子どもたちの教育のために信号機が1つ設置され、多くの子が中学卒業後は高校進学のため島を出ていく、みんな顔見知りの小さな島です。

 そもそも私は東京で生まれ育ち、大学で出会った野外教育という世界に引きこまれ、東京学芸大こども未来研究所の研究員をしながら、野外教育の指導者として約10年活動していました。野外教育は、野外に関する知識や技術の習得だけでなく、野外での活動を通した教育活動であり、直接体験や非日常性を大事にして学びにつなげる活動です。

 外で遊ぶことが少なくなった現代の子どもにとって、非日常である自然環境下での活動では、色鮮やかな景色、鳥や虫の声、冷たい川の水など、自然が五感に語りかけてくることが多くあります。いつどのようなタイミングで何を受け取るかは一人ひとり違いますから、私の価値観を押し付けないように、自然と対話をしている子は安全を確保した上で見守りつつ、長く関心が向かない子には声をかけつつ、子どもたちには感覚を目一杯開いて自然の中で過ごしてもらいたいと思います。また、活動を体験で終わらせず学びにつなげるために、感じたことや気付いたことを聞く等のふりかえりをすることも意識しています。

 そのような野外教育活動をしていた私ですが、十数年前に離島に移住し、非日常であった海の自然環境が日常となり生活となりました。仕事(畜産業です)するにも、畑仕事するにも、海へ遊びや食料調達の魚とりに行くにも、天気図や潮見表を見て、二十四節気を見て、先人たちに教えを請いながら、自分の目で直接空を見て風を感じて、目の前の状況を判断し行動を決めます。自然とともに生きてきた先輩方の自然に対する知識や技術には目を見張ります。私も繰り返す活動によって自分の知識と経験が融合し身についていくのを感じます。まあ、ただただ雲が流れていくのを見るのが楽しく、雨が降る前に仕事を終わらせて、波音を聞きながら夕日を眺め、虹の出所があったから追いかけて確認し、さそり座が高い位置にあることを不思議に感じ、白化した珊瑚が数年後に回復した時は嬉しく、と自然の移り変わりに合わせて楽しく生きているだけなのです。そんな日々の中で、雨が降る前はどんな変化があるか、なぜ珊瑚が白化するのかなどの疑問が「もっと知りたい」につながっています。

島から見た星空

 以前、島の子どもたちと海がない雪深い村の子どもたちをオンラインでつないだことがあります。3月下旬で、画面には半袖短パンの島の子とスキーウェアの雪国の子が映っていました。お互いの地域を歩きながら紹介しあった後、事前に送ったそれぞれの特産品(黒糖と米)をいただくという活動です。自分の地域を得意げに案内すると、他方から質問が出るわ出るわ、テレビや本で見たのと違うものや、初めて見るものもあったようです。島の子からは「何を着ているの?」「そのかまくらどうやって作るの?(20人位入れる大きな物でした)」「雪はいつまであるの?」とか、雪国の子からは「もう海で泳げる?」「沖縄なのにシーサーはいないの?(この島はシーサーが少ないです)」「海では何が釣れる?」とか。違いだけでなく、黒毛和牛の畜産業を営んでいる、希少な動植物がいるなどの共通点もありました。最後は「絶対遊びに行くね!」と言って終了です。直接体験ではありませんが、興味を持つきっかけになったかと思います。いつか本当に雪国に行き、または、島に来てくれたら、それはとても嬉しいことです。

 今後は、自然・地域・文化等も含めた活動を展開し、体験をきっかけとして自然やそこにいる人への関心が芽生え未来に続いていくような、五感を刺激する活動を行っていけたらと思います。

東京学芸大こども未来研究所プロジェクト研究員
角田貴世
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