Vol.184「読むこと」の得意な生徒に

2024.08

 文部科学省は特定分野に特異な才能のある児童生徒への指導・支援を検討し、「個別最適の学び」をさらに推し進めています。教室にいる「読むこと」が得意な生徒、苦手な生徒がそれぞれ自分に合った学びをするにはどのような授業をしたら良いのか、授業者としてはいつも頭を悩ませています。その中で「読むこと」が得意な生徒へ向けて、私が意識的に行ったことを2つ紹介します。

 

 1.「本を読む」
 私が出会った「読むこと」が得意な生徒たちの特徴は読書が好きということでした。そのため皆、黙っていても本を読む生徒でしたがそれでも好みはあり、あまり読まない分野というものが存在していました。普段なら手に取らない分野の本も幅広く読み、新たな考えの構築ができるよう、本に触れる授業を意識的に設けました。
 取り組みの一つとして、授業で作品について調べる際に学校図書館を利用しました。教科書の作品は、大半が作品の一部のみを掲載しています。学校図書館では全文が掲載されている本が読めますし、授業全体では扱わない発展的な本も資料として選択することができます。ここでなるべく対象範囲を広げて本の紹介を行いました。また司書の方に協力をお願いし、レファレンスもしていただきました。こうして生徒が自分では手に取ることのない本に出会う機会を作りました。

 

 2.「情報を読み取る」
 国語科の授業で育成する力には、情報の妥当性や信頼性の吟味の仕方を身に付けることも含まれます。平成30年告示の高等学校学習指導要領では、現代の国語、論理国語の中に「情報と情報との関係」「情報の整理」の2つの内容で構成された「情報の扱い方に関する事項」が新設されており、これは社会に求められる資質・能力でもあります。
 論理的文章を読む際は、同じ題材の複数の評論文や新聞記事等を比較し、共通点や相違点を見出して考察する授業を行っていました。一つの題材を多角的・多面的に読むことで、情報を精査して構造化する力の育成が望めます。この比較のための教材については、教員が提示したものを使用する他に、生徒自身が探してきた資料を使用するという選択肢もありました。適切な資料を選び取るためには、本文と資料の理解、さらに二つの関連性を読むことが必要になります。このように得意な「読むこと」の力を生かす場面を設け、授業において資料を活用することで検証の場とし、さらなる伸長をはかるようにしていました。

 

 これからも生徒が自分に合った学びができるように、私自身が学び続けなければと思っています。

 
東京都立広尾高等学校
久保田美智子
pdfをダウンロードできます!