Vol.162書くことが得意な生徒への指導

2023.05
 令和3年の中教審答申においては、2020年代を通じて実現を目指す学校教育を「令和の日本型学校教育」と示し、全ての子どもたちの可能性を引き出すべく、「個別最適な学び」の必要性が強調されているところです。「個別最適な学び」は、指導の個別化と学習の個別化という観点で整理されていますが、我々教師はこの両面を踏まえ、個の学習を充実させることに努めなくてはなりません。
 こうした学びの在り方として、これまでは「つまずきの見られる生徒」や「苦手とする生徒」に対して、支援や手立てを講じることに注力してきた部分が大きかったように思われます。しかし、子どもたちの多様性を鑑みると、「意欲的な生徒」「得意な生徒」に対しても積極的にアプローチし、より一層高めていくために指導の工夫をしていくことも求められていると言えます。 ここでは、中学校国語科教諭としての立場から、「書くことを得意とする生徒」に焦点を当てて効果的な指導について考えたいと思います。実際に、文章を書くことを得意としていた本校の卒業生に「文章を書く際、どのような指導を受けたいか」ということについて話を聞きました。以下インタビューにおいて印象的であった言葉を抽出します。

  • ○「文章を書く前や、書いている最中のアドバイスはあまり必要性を感じませんでした。まずは自力で考えて書き上げたいですし、その方が書く力も付くと思います。」
  • ○「せっかく書き上げた文章に、修正点ばかりに赤ペンを入れられるのは嫌でしたね。修正だらけで、もはや自分の文章ではなくなっている、とムカついたことがありました(笑)。修正は確かに必要ですが、もっと『改善』をしていく方向で有益なアドバイスをもらえるのが理想です。」
  • ○考え方というか世界観というか、自分の価値観の幅を広げてくれるようなアドバイスがあると特に嬉しいです。若い自分が先生方に絶対に敵わないことって、経験値なんです。人生の先輩として私よりも見てきたものも多く、それだけ見聞も広いですし、自分にはない視点を持っていると思うんです。そこから新たな気づきを与えてくれる助言や、浅いところを深めてくれるような助言がほしいですね。」

 書くことを得意とする生徒は、自分が紡ぎ出した言葉への思い入れも強く、文章をより良くしていきたいという向上心も強いです。一つひとつの文脈をより良くしていくための代替案や文章には書かれていない新たな視点を提示するなど、ポジティブで建設的なアドバイスを求めています。生徒の幅を広げる有益な助言ができる教師でありたいものです。

多摩市立青陵中学校
片山崇
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