「東京はとても寒いけれども、〇〇さんが住んでいる□□県も寒いですか?」と新幹線で数時間かかるところへ住んでいる子どもへ質問したり、「今日もがんばりましたね。おやすみなさい!私はこれから小学校へ訪問です。」と時差がある国へ住んでいる子どもへ挨拶したり、現在、私は、オンラインによることばの支援にも携わっています。
私は発達支援が専門のフリーランスです。30年近く前、大学で言語障害児教育を専攻し、大学院で学びを深める過程で、ことばの支援の奥深さの虜になりました。当時、指導してくださった方々から学んだ「目的と方法とを明確に見分け、目的にたどり着く方法を選ぶ」というスタンスは、具体的な支援技術だけでなく、私の働き方も拡げてくれています。
私設の支援室を開室した当初から、オンラインによることばの支援は実施しており、特にこの1年間で8割以上、オンラインでの支援に移行しました。当初から「あの子への支援をオンラインで届けるには、どのようにすればよいだろう」という、オンラインでの支援ありきでスタートしました。今よりも通信環境が整っていなかった頃から、英語圏ではオンラインによることばの支援が試みられ、対面同様の効果があるという研究報告があることを学会や専門誌を通して見聞きしていたことは私の背中を押しましたが、何より、「目的と方法とを明確に見分け、目的にたどり着く方法を選ぶ」というスタンスが大きく影響したと思います。
ことばの支援の大きな目的は、ことばの発達を促すことです。対面かオンラインかは方法の違いにすぎません。目的にたどり着くのであれば、どちらでもよいはずです。
対面が難しいときの代替手段、という理由で活用してきたオンラインでしたが、マスクをつけることが日常になった現在では、双方の口の動きや表情を見せ合うことができる貴重な機会になっています。ことばを理解したり、ことばを使ったりすることを促す支援において、顔が半分近く隠れる状態は、好ましいとは言えない中、オンラインは効果が見込める方法の1つです。もちろん、オンラインで全てが解決するとも思っていません。画面という限られた枠を介して行われるやりとりに、対面との違いがあることは明白です。それぞれの方法のメリットとデメリットを踏まえながら、日々、対面とオンラインとを併用したことばの支援を継続しています。
いつか、対面でもなく、オンラインでもないような方法が出てくるのかもしれません。そのときはまた、目的と方法とを明確に見分けて、目的にたどり着ける方法を選んで、ことばの支援に向き合っていきたいと思います。