Vol.125思春期の子どもが抱えがちな問題と教師としての対応
~「なりたい自分」と「ありのままの自分」~

2021.4

新しい自分

 入学や進級は、気持ちが一度リセットされ、新たなスタートの区切りとなります。多かれ少なかれ「自分を変えたい」「成長したい」と考える生徒にとってチャンスです。最初のホームルームでは、そんなスタートを「新しい自分」という言葉で表現し、生徒が「なりたい自分」になることを、担任として応援します。交友関係が広がる中、今までやったことのない役職にチャレンジしたり、積極的に行動したりする姿を頼もしく見守ります。
 本人も知らなかった新たな一面が現れ、活躍することがある一方で、慣れない場面に突き当たり、うまくいかなかったり疲れてしまったりすることもあります。また近年の高校生の交友関係は、スマートフォンの普及により、入学前からSNSで知り合い、入学と同時に複雑多様化しており、そこでつまずいてしまうケースもあります。

学校は「〇〇する場所」
 クラスがスタートして、少し経った頃、全員に個人面談をするようにしています。(2学期半ばに再度面談をします。)新年度の抱負や進路希望、今困っていることなど、生徒の声に耳を傾けます。この時さりげなくSNSのクラスグループの内情や、教室で孤立している子がいないかなどの様子も聞きます。たとえ短時間であっても、教師と生徒が一対一で話すことは、その後の生徒のみとりを助けてくれます。また面談と同時に、クラス全体にもメッセージを発します。「学校は○○する場所」と黒板に書くと、生徒は「勉強」「部活」「行事」などと答えますが、「学校は失敗する場所」でもあることを共有します。自分の失敗も仲間の失敗も許し、「ありのままの自分」を認め合うことができるような風土をつくることを心がけます。

ありのままの自分
 保護者の関わりも大事です。入学式後の教室での挨拶や保護者面談の際、「保護者だからこそわかる、子どもの良いところを折にふれ伝えてほしい」ということをお願いしています。これは生徒の心理面を支えることと、進路を決定する時のヒントになります。高校生は見かけや言動は大人のようでも、保護者の影響力は大きいです。自分の良いところは何か、自分は何に向いているのか。保護者の言葉は「ありのままの自分」を肯定し、「なりたい自分」への手がかりとなるはずです。

 「なりたい自分」と「ありのままの自分」。どちらも尊重し、3年間の生徒の成長を支援したいと思います。

神奈川県立秦野曽屋高等学校
大谷千鶴
pdfをダウンロードできます!