国語がそこまで好きな教科ではなかった私を変えたのは、高校生の頃に出会った歌の歌詞の中の言葉でした。――この言葉、とっても素敵だな――そんな思いが、日々の授業づくりのベースになっているように思います。
単元例1 「春、わたしの言葉」
2021年春、未知のウイルスによって全世界が混乱に包まれました。新学年の担当になりましたが、新入生と直接顔を合わせることもできないまま、オンラインでの授業が始まりました。
せめて、生徒と一緒に季節を感じるような学びができないか。ここから、「心を留めた春の言葉」を一言でハガキ大のカードに書いてもらい、学校に送ってもらうことを思いつきました。
「におい」、「土」、「ネームペン」、「はっくしょーん」…と、生徒たちが等身大で受け止めた春の言葉が届きました。これらをオンライン上で公開し、チャット機能で感想を言い合いました。
「におい」には、「かすかなさくらの匂いがするというところがロマンチックだと思った」。「土」には、「土を蹴るという表現が、新しい一歩を踏み出そうという事を表しているのだと思う」と、ある生徒。離れていても、こんなにもその人らしい言葉で表現し合えることを実感しました。
単元例2 「歌を歌で味わえば」
楽しく言葉の力のつく短歌の学習ができないか。※甲斐利恵子先生のご実践、「詩で詩を読む」をヒントに、短歌を短歌に創作することで、短歌に親しむ単元を構想しました。
中学2年生の初夏、短歌とは何かもよく分からない生徒がほとんどです。そこで、この単元開きは、俵万智の代表的な短歌「サラダ記念日」を読んで想像したことを、短歌に表すところからのスタートです。
ある生徒の作品です。できた短歌の感想を言い合い、魅力的な短歌の特徴を言葉で表現しながら、短歌を表現するための言葉を溜めていきました。
そして、1年後の3年生の春。今度は、好きな歌の歌詞、和歌を再び短歌に表していきました。例えばofficial髭男の「ミックスナッツ」を詠んだある生徒の歌です。
続いて、和歌を短歌に表しました。「めぐり逢いて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月影」(紫式部)を詠んだ生徒の作品です。
これをさらに友達が詠んだ歌は、
言葉が言葉をつなぎ、伝えたい、語りたい思いを乗せていきます。
まずは、生徒と一緒に教師も言葉に楽しむ。学びの本質は、実はとても近いところにあるように思えてきます。