Vol.182主体的に学習に取り組む態度を評価するために

2024.06

 新学習指導要領の実施において、高校で一番注目を集めているのが観点別学習状況の評価の記録であると思います。今までも観点別評価は行っているところではありましたが、これを記録するとなるとまた話が変わってきます。特に高校においては、1〜5の5段階評定のみを最終的に示せばよかったのですから、評価の方法や内容も変えていかなければならないということになりました。

 今回整理された3つの観点のうち、特に問題になったのが主体的に学習に取り組む態度の評価です。この観点を評価するために私が意識したことは「振り返り」です。今回の改訂で「主体的・対話的で深い学び」の視点に立った授業改善が言われていますが、主体的な学びの中にも「見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげる」という文言が出てきます。特に私が専門とする数学においては、系統性が強く様々な内容が体系的につながりをもって構成されます。授業では今学んでいることが何から派生してきて、この後どのように発展していくのかを考えながら学習を行うことが、主体的な学びの実現につながっていきます。主体的に学習に取り組む態度の評価についても、生徒のそのような様相を見取ることができるように、授業の振り返りシートを記入することや、単元のそれぞれ内容のつながりを記述することといった工夫を行いました。

 一方でこのような新たな評価の方法に苦労する教員もいます。今までは考査やノートチェックのみで評価をすることが多かったように思います。数学は答えがはっきり出るものが多いので、採点はそんなに大変ではありません。しかし逆に、文章記述のようなものを評価することは多くないので、教員間での評価規準のすり合わせや内容の見取りについてははじめはあまりうまくいきませんでした。そしてなにより、そのような内容を評価するからには、授業を中心とする学習指導において、生徒が主体的な学びを実現するような実践を行うことが求められます。しばしば「教えてないことを評価するな」という話をきくことがありますが、主体的に学習に取り組む態度であっても、生徒が受け身になる授業で主体的性を評価されても生徒だって困ってしまいます。今まで以上に、「教師が教える」から「生徒が自ら学ぶ」といった指導観をもち、授業をアップデートしていかなければならないと感じられました。

 生徒を評価をするということは、教師自身が評価されていることと同値であることを胸に秘め、これからもより良い授業を志向していきたいと思います。

東京都立芦花高等学校
佐藤智昭
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