Vol.207改めて問われるグループワークの価値

2026.09

 皆さんは小学校をどんな場所だと捉えていますか? 今の時代、「教科書を開いて知識や技能を身に付ける場所!」と答える人は少数だと思います。小学校が担う役割は時代と共に広がりをみせています。私は小学校を、子供たちが社会に出るための大切な土台を作る場と捉えました。そうすると、単なる学習方法の一つであるグループワークが、「子供たちが社会の縮図の中で生きる力を磨く場」に見えてきました。学習の質を高め、子供たちの可能性を広げるグループワークの価値はどこにあるのか、以下の3点にまとめました。

1.1人では出来ないこともみんなとならできる
 ロシアの心理学者ヴィゴツキーは「発達の最近接領域」という理論を提唱しました。これは、子供が一人ではできないことも、他者と協力することでできるようになる領域のことです。グループワークは、まさにこの「発達の最近接領域」を広げるための実践です。算数の問題を一人では解けなかった子が、グループで話し合い、ヒントをもらうことで解決策を見つけます。すると自分はできる、みんなと一緒ならもっとできるという自信と喜びを感じることができます。また、教育哲学者のデューイは、教育を単なる知識の伝達ではなく「社会的な活動」と捉えています。グループワークは、まさに社会的な活動の練習となっているのです。

2.失敗が許される安心できる場で成長する
 みなさんは心理的安全性という言葉を聞いたことがありますか? 子供が安心して意見を述べ、失敗を恐れずに挑戦できる環境のことです。グループワークは、この心理的安全性を確保しやすい場です。社会に出る前に、失敗しても許される安全な環境で学ぶことは、子供たちの自己肯定感を育み、挑戦する心を養う上で非常に重要です。しかし、気を付けなければならないこともあります。教師が「どんな意見も大切」「失敗しても大丈夫」というメッセージをしっかり伝えないといけないということです。子供同士が尊重し合う雰囲気を作るのは教師の役目です。常にグループの状態に気を配ってください。アンテナを高く張れるように、日頃から子供たちとのコミュニケーションは欠かさないようにしましょう。

3.「答え」だけでなく「考え方」を学ぶ場
 グループワークの醍醐味は、「答えは何?」ではなく「どうやって出した?」「どうなっていると思う?」という探索的な問いをみんなで考えることにあります。例えば「123から24を引くと?」と聞けば、答えは99で終わりですが、「どうやって計算した?」と聞けば、様々な計算方法や考え方が飛び出します。一方で「フリーライダー」の存在も無視できません。グループワークには積極的に関われないフリーライダーが必ず存在します。しかし「どうやって出したの?」のようにプロセスや考え方を問う探索的な問いであれば、全員が自分の考えをもてます。多様な意見も出やすくなるためフリーライダーの発生を抑制する効果が期待できます。さらに3~4人のグループならフリーライダーが発生しづらいという研究結果もあります。ご自身の学級と照らし合わせて、より効果的なグループワークをデザインしてみてください。

 最後に、教師にとってグループワークは、子供一人ひとりの個性や発言を引き出し、学びを活性化させる強力なツールです。ぜひ質の高いグループワークを設計することに意識を向けてみてください。そして、設計した後は思い切って子供たちに委ねてみましょう。子供たちはきっと、思いがけない素敵な一面を教師に見せてくれるはずです。

小金井市立南小学校 
草野 志温
【参考文献】
小学校教員養成課程における理科実験の最適人数についての研究  日本科学教育学会年会論文集 Vol.38(2014)
小グループ学習における適切なグループ構成人数 医学教育 第31巻・第2号2000年4月
Collaborative learning approaches
https://educationendowmentfoundation.org.uk/education-evidence/teaching-learning-toolkit/collaborative-learning-approaches
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