私は、3年間、南アメリカのチリの日本人学校に勤務しました。2、3年で職員が入れ替わっていく日本人学校。小学籍の私は、中学部の総合的な学習の時間での「職場体験」の授業づくりを見ていて、問題を感じていました。その授業では、中学部の担任が自分のつてで見つけてきた近郊の工場や施設を見学し、全校の前でその様子を写真で発表していました。私が3年目になるときに中学部の担任が入れ替わり、年度当初まったくつてがなくて途方にくれて相談を受けたことがきっかけとなり、「職業体験」の授業づくりに携わることになりました。新しい中学部の職員1名と小学籍の職員2名で、学習内容を見直しと、安定して実施し続けることができる体制づくりの2点を目標に取り組みました。
写真 職業体験で活動する生徒
まず、教材研究。現地に移り住んでいて永住者の日本人、企業などに所属している駐在員の日本人に出会いました。たくさんお話をうかがうと、それぞれの人が思いや願いをもっていることがわかりました。そこで、仕事に対する思いや日本人としての誇りを学習内容にして、成長していく自分に重ねて思いを寄せることができるような単元づくりをすることにしました。そんな中で出会ったのが、同窓会長でした。日本人を対象に引っ越し業を営む日系2世の永住者です。私たち学校職員も引っ越しでお世話になっています。日本人の出入りをたくさん把握していて、学習でねらっていることを理解していただくと、引っ越し業という仕事柄、たくさんの候補者を一緒に考えてくださいました。そこで、毎年度、単元のオリエンテーションで、同窓会長からゲストティーチャーを紹介していただくようにしました。学校にゲストティーチャーを招いて、日本に渡ってこられた経緯、日本に対する思い、外国語を身に付けるための努力、海外で働くにあたっての日本人としての高い専門性と誇りなどをうかがいました。魅力たっぷりのゲストティーチャーをコーディネートして、単元をつくっていく楽しさがありました。年度末には、中学部の子ども達の実態から次年度の計画を立てることも、単元づくりの1つとしました。ただ今、実施3年目。今年度末で中学部の担任が入れ替わります。この入れ替わりが成功の鍵となります。
写真 同窓会長さんをお招きして
総合的な学習の時間の授業づくりでは、他の教科以上に目の前の子どもの実態をふまえて、教員自身が思いや願いをもってのぞみます。学習目標達成のために必要不可欠なゲストティーチャーをどう探し、どう構成するか、そして、安定した実施のために次年度の子どもの実態をふまえて計画を立て、引き継ぐことも大切です。
写真 ゲストティーチャーを囲んで
東京都港区立芝浦小学校教諭
八木美香
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