
デジ読評価プロジェクトの実践校で実践研究協力をしてくれている香川県・土庄小学校司書教諭、岡亨さんの新聞記事データベースやオンライン百科事典の活用の実践を紹介します。
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土庄小学校は、瀬戸内海の小豆島にあります。統合2年目の新しい小学校です。私は、土庄小学校に勤める前には、へき地校である安田小学校や北浦小学校(統合して土庄小学校)に勤めました。併せて、それぞれの学校での実践の一部も紹介します。
<土庄小学校>
1.対象・単元
4年生・社会科「地震からくらしを守る」(東京書籍)
2.ねらい
地震はいつ起こるかわからない。自分は何ができるか
3.展開
導入部で、新聞記事データベースを活用した
① 災害にはどのようなものがあるだろうか?
・地震 ・津波 ・風水害 ・火山 ・雪害 [学校図書館の本、気仙沼の写真集活用]
子どもたちが学習に取りかかろうとしたとき、熊本で地震が起きた! そこで、すぐに、デジタル新聞データベース「朝日けんさくくん」で調べることにした。その後、
② どのように行動しなければいけないか? どうするか?
・登校中 ・家に一人で
③「4 年 3 組『こども防災マップ』を作ろう!」
・マップの作り方説明
④ 日頃から備えておくものの紹介、ものがない場合、簡単に作れるものを紹介
・スリッパ・トイレ・お皿・服など [毎日小学生新聞活用]
⑤ まとめ
・災害にいつでも備えられるように準備をしておこう! とまとめた。
<北浦小学校 1>
1.対象・単元
2年生・国語科「おばあちゃんに聞いたよ」(東京書籍)
2.ねらい
秋の七草を調べる
3.展開
国語の教科書に春の七草が載っていた。早速、『学研ニューワイド学習百科事典』で検索! 秋の七草を調べた。對崎先生が送ってくれた『10分で読める 音読二年生』(学研教育出版)にも載っていたので子どもたちに紹介した。また、漢字を書くときに「会う」と「合う」の間違った使い方をしている児童が数名いたので、「会うと合うはどうやって使い分けるの」のというページで説明する場面もあった。
『学研ニューワイド学習百科事典』より
秋の七草・春の七草を検索
<北浦小学校 2>
1.対象・単元
1年生・国語科「歯がぬけたらどうするの?」(東京書籍)
2.ねらい
教科書に出ていた知らない国を調べる
3.展開
地球儀を使って学習しているのを見かけた。そこでこの地球儀を何に使っているのか、1年生の担任に尋ねてみた。
「あの地球儀は、『歯がぬけたらどうするの?』という単元で使っています。日本では、上の歯は縁の下へ、下の歯は屋根の上へ投げるでしょう。各国で、よく似たいろんなやり方があるの。韓国、中国に始まって、メキシコやレバノンが出てくるので、地球儀を使いました。」
との返答があった。早速、デジタル教科書『新しい国語』(東京書籍)を開いて教材を読んでみると、紹介されているのは、韓国・中国・メキシコ・イギリス・レバノン・リビア・ボツワナ。これは、大人でもどこにあるのかわからないだろうと思い、再び1年生の担任に聞いてみると、やはりそうだったので『学研ニューワイド学習百科事典』を活用したとのことだった。私も「ボツワナ」を検索! 地球儀と『学研ニューワイド学習百科事典』両方使えば、よりわかりやすく説明ができることがわかった。
『学研ニューワイド学習百科事典』より
地球儀での説明
<安田小学校>
1.対象・単元
6年生・理科「電気とわたしたちのくらし」(東京書籍)
2.ねらい
電気を利用した物をつくろう
3.展開
これまで学習したことをもとに、電気を利用したおもちゃを作ることになった。教科書には、手回し発電機のロープウェイ・発光ダイオードの家・電気自動車が例として載っていたが、同じ物では面白くない。ここで、新聞の活用を…。「ダイオウイカを作ろう!」ということで、新聞記事データーベース「朝日けんさくくん」で検索した。あった! 鳥取市沖でダイオウイカを捕まえた写真入りの記事が載っていた。写真も掲載されていたので、それらを参考にして、「発光ダイオード ダイオウイカ」を作った。手回し発電機で発電して、ダイオウイカを光らせた。深海魚を検索して、深海の生物について関心を深めた。「リュウグウノツカイ」という深海魚が検索にかかった。楽しい!!

教科の中で、新聞記事データベースやオンライン百科事典を活用してみました。オンライン百科事典はとても人気がありますが、小学校での新聞記事データベースの活用は、なかなか難しくあまりできていないというのが現状です。しかしながら、少しでも活用することで、児童の知的好奇心が喚起されれば、小学生でも、新聞記事データベースの活用は十分できます。
そして、日常生活で考えてみると、島にこそ中央紙が資料として必要です。小豆島は夏になると台風がよくきます。その際、新聞が届かない時もあります。そんな時にデジタルが役に立ちます。
また、職員室や学校図書館には、地方紙は置いています。地方紙は、身近な内容を取り扱っているので役に立ちます。しかしながら、中央紙は置いていません。中央紙を活用することで、児童や教員の視野が少しでも広がればいいなぁと思っています。
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新学習指導要領(現行)において、様ざまな教科・場面において新聞の活用が問われています。このことは、学習指導要領の重点課題、言語力の育成と深く関わっています。
文部科学省は、このねらいを達成するために、学校図書館への新聞配備の促進をめざして平成24年度から5か年計画で、そのための費用を予算化しました。しかし、この予算は一校に一紙分に過ぎず、さらには「地方交付税」であるために、現実には配備がなかなか進んでいないという状況にあります。
ですが、新聞を活用する学習内容が教科書に取り上げられている以上、各学校では、教員が自宅で取っている新聞を学校に持っていったり、児童生徒に持参させたりと工夫をして授業をしていることも聞いています。
このように、学校予算で新聞を購入しても一紙のみ、児童生徒が持参しても一日分という状況ではなかなか思うような新聞活用教育の実践は困難なことでしょう。このような課題の克服に、新聞記事データベース活用は力を発揮します。
百科事典の活用も小学校中学年から求められています。百科事典1セットは10万円を越え、複数セットの配備は困難です。1学級の児童が同時に使えるオンライン百科事典は調べ学習の強い味方です。
皆さんも、岡さんのように、新聞記事データベースやオンライン百科事典のデジタルデータベース活用にチャレンジしてください。子どもたちは、生き生きと学習しますよ。
東京学芸大学デジ読評価プロジェクト特命教授
對崎奈美子
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