Vol.030学びに向かう力を引き出す体育における探求型授業デザイン②こだわりの作戦〜小学校4年生「タッチハンドボール」〜

 状況が複雑なボールゲームは、「上手な子」中心の授業になりがちで「みんなで探究」とはなりにくいのではないでしょうか。

 そこで、まず「学びのプラットフォーム」をつくることから始めてみましょう。おもしろさの本質に迫るために必要になる知識や技能について先にみんなで共有し、探究の土台を築いた上で、単元後半にそれらを活用しながら探究したり試行錯誤したりする場面を仕組んでいくのです。「共通のものさし」があるのでみんなが学習に参加できますし、思考・判断の評価もしやすくなります。

 図1は小学校4年生「タッチハンドボール」の単元計画です。筆者が考案したこのゲームは、「ボール保持者はボールを持ったまま走ってよい」、「守備者にタッチされたらその場で止まって、パスをしなければならない」というゲームです。ゲーム理解において重要となる「空間」に気づいたり、活用したりしやすいのが特徴です(久保、2017)。

pic_03  まず、「ボールをもたないときの動き」などについて単元前半で学び、その上で、「パスのタイミング」に焦点をあてながら作戦づくりの必要性に気づかせていきます。基本的な動き方を共通して学んでいるからか、自チームの課題や仲間のよい動き方をどんどん見つけ、相互評価したり攻めに生かしたりする姿が見られました。さらに、得点パターンや役割分担、一人一人の特徴を生かす攻め方などを考えるなど、主体的に課題や目標を見出し、仲間と試行錯誤していました(写真1)。

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写真1 iPadを見ながら振り返り

 作戦を練り込み、何度も練習していくうちに生まれた「こだわりの作戦」(写真2)。「どうしてこうなったの?」と聞く私に、経緯や試したこと、参考にしたチーム、役割分担などを子どもたちは熱く語ってくれました。同じプラットフォームから出発したはずの学びの列車ですが、一生懸命考えたからこそ、たどり着いた答えはチームごとに異なるのです。学びの履歴を語るその姿は、自分たちが歩いてきた道のりへの自信を表しているようでした。

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写真2 ノートに書かれたチームの作戦とそのポイント

【参考文献】
久保賢太郎(2017)『東京学芸大学附属世田谷小学校研究紀要』(49) p162-169
秋田喜代美(2012)『学びの心理学 授業をデザインする』左右社
C.ファデル他(2016)『21世紀の学習者と教育の4つの次元ー知識・スキル・人間性・メタ認知ー』北大路書房

東京学芸大学附属世田谷小学校教諭
久保賢太郎
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