Vol.073音楽科におけるアクティブ・ラーニング②
音楽科の授業を本当にアクティブにするために……

2019.02

 小学校音楽科の授業では、歌ったり楽器を演奏したり、音楽をつくったり聴いたりするなど、音楽的な活動している時間がほとんどです。ですから、アクティブ・ラーニングの必要性を謳わなくても最初からアクティブではないか、と思われているかもしれません。しかし、実際はそうでもないと思っています。どういうことかというと、「口はこのように開けましょう!」「ここはもっとフォルテで演奏しましょう!」という具合に、教師からの指示だけで進められる授業、あるいは「この曲を鍵盤ハーモニカで吹けるようになりましょう!」と技能面だけが重視されるような授業が、少なからずあるのではないかと思うからです。そのような指示ばかり、技能面だけを重んじる授業では、アクティブ・ラーニングが目指すものとは逆の「受動的」な子どもを育てていると言わざるを得ません。もっと子どもが音楽に自ら関わっていきたくなるような授業が、いま求められていると思います。

 本来のアクティブ・ラーニングを意識するとき、私は特に音楽づくりや鑑賞の分野に着目しています。音楽づくりでは、音も楽譜も何もない白紙の状態から子どもたちが音楽を立ち上げます。並々ならぬ創造性が求められます。グループで音楽をつくる活動も行います。活発なコミュニケーションが生まれ、世界に一つしかない、自分たちにとって大きな価値のある音楽ができあがります。ちょうど今、5年生で「早口言葉の音楽をつくろう」という題材の音楽づくりに取り組んでいます。日本には「生麦・生米・生玉子」「坊主が屏風に上手な坊主の絵をかいた」など面白い早口言葉がたくさんあります。それらの言葉を自由に使いながら、言葉のアンサンブルをつくるのです。しかし「早口言葉で音楽をつくりましょう!」と教師がもちかけても、すぐに取り組めるものではありません。そこで音楽づくりの参考になるような曲を鑑賞します。こういうときの子どもは、音楽の仕組みを聴き漏らすまいと目を光らせます。まさにアクティブです。結果、言葉をカノンにしたりかけ合いにしたり、早口言葉を面白いリズムに変化させて複数の言葉を重ねるなどして、時には大人が思いつかないような音楽をつくり出すのです。つい先日、こんな様子が見られました。4人グループのうち2人がまさに早口で、しかしあとの2人は故意にゆっくり、同時に言うのです。音楽の専門用語で言うと、拡大とか縮小という作曲技法に当たり、よくフーガという形式で用いられます。作曲技法をこちらから教えなくとも、子どもたちが言葉で遊びながら試しているうちに、価値ある学びを獲得していくのです。音楽づくりでは本来のアクティブ・ラーニングが求める子どもたちの姿を頻繁に見ることができている、それが私の実感していることです。

筑波大学附属小学校教諭 髙倉弘光
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