Vol.114中学校における指導場面②
選択と集中

 体育祭の本番1週間前、とある生徒がこんなことを言ってきました。「部活動の練習と体育祭の応援団の練習が重なり、両立できなくて困っています。どうしたら良いでしょうか」という質問でした。どちらを優先したいのか尋ねても答えは出ず、かといって、どちらを優先するように促しても「でも……」というばかりで動こうとせず、よくよく話を聞いてみると、悩むばかりでどちらの練習にも参加していないようでした。そこで私は「両立したいと考えていることは立派だけど、そもそも体育祭まではあと1週間しかなく、今のままでは応援団として出場出来る状況ではないのだから、応援団の練習に参加するべきだ」と私なりの答えを伝えました。自分で考えさせるようなアドバイスには首を傾げるばかりだった生徒ですが、この具体的なアドバイスには納得したようで、すっきりした表情で練習に参加していきました。

 前回の記事では「待つこと」「褒めること」を書きましたが、ここではその一歩先の「選択」と「集中」をキーワードにしたいと思います。

 中学生という時期は、精神の発達段階において不安定な時期と言われています。私の学校でも毎年様々な地域から新入生を迎えていますが、新しい環境になり、新しい友人を得たり、関わる大人の数も増えていくと、これまでと異なる交友関係が広がる中で他者からの自分の見え方を意識するということが増えてきます。「自分はこうしたいけど、他の人は違うことを考えている」といった、自分と他者の評価軸が入り混じっている状態、これが思春期における「自己決定の難しさ」を誘引している原因のひとつではないでしょうか。

 先ほどの例で見ると、「両立したい生徒自身の気持ち」と「部活に出てほしい友人の気持ち」、「応援団の練習に参加してほしい友人の気持ち」の三者が入り混じった状態であったと言えるでしょう。特定の状況において、ひとつを選択しそれに集中するということは、これから自立して社会を生き抜く際に必要な力ともいえると思いますが、選択には必ず何かしらの理由づけが存在します。今回私が行ったのは「選択の代理」とも言える行動です。こうしたアドバイスを通して、将来的に生徒が主体的な選択と集中をできるように促していきたいものです。

私立北鎌倉女子学園中学校高等学校
音楽科専任教諭 木川翔
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