Vol.056ほんの少しのスパイスを! 国語科学習におけるアクティブ・ラーニング②
「3つの『対話』」というスパイスを効かせる

 ELEMENTS Vol.55では、「アクティブ・ラーニング」を生み出す教材や言語活動のスパイスとして、「半未知」と「ずれ」を効かせることを提案しました。今回のスパイスは、「3つの『対話』」です。「対話」を辞書で引くと「向かい合って話し合うこと」など人物間の直接的な交流を指す場合が多いですが、ここでは、佐藤学氏の「学びは、対象世界との対話(文化的実践)と他者との対話(対人的実践)と自己との対話(自己内実践)が 三位一体となった活動である。」とする「学びの三位一体論」にならいます。たとえば、次の俳句の〇〇〇に入ることばは、何でしょう。

 雪〇〇〇 村一ぱいの 子どもかな

七番日記 俳文・一茶

 小林一茶の句です。子どもに問うと「ふって」、「まつり」、「あそび」など様々なことばが出されます。「ずれ」が生じた瞬間です。「どうして?」、「だって」、「なるほど!」・・・他者との対話が始まります。一茶が紡いだことばは「とけて」。それを知った子どもは、今度は作品との「ずれ」を解釈すべく思考・判断し、やがて納得の表情を浮かべます。作品と俳人という対象世界との対話が成立したのです。その上で「どうしてAさんは『ふって』ということばを入れたの?」と問うと、自分の生活経験や読書経験がことばに反映していることを自覚するのです。これが自己との対話です。国語科、特に「読むこと」の学習では、これまでの教材や言語活動に、3つ(対象・他者・自分)との「対話」というスパイスを効かせることで、「深い学び」に向かっていきます。

 もう一つ、例を挙げましょう。『工藤直子少年詩集 てつがくのライオン』(理論社)に、「ライオン」という詩が掲載されています。雄ライオンが、雲を見上げながら女房(雌ライオン)に言います。「そろそろ めしにしようか」と。二匹は連れだってでかけ、「〇〇〇〇と縞馬を喰べた」と締めくくられる短い詩です。

 さあ、あなたはどんなことばを想起しましたか。「ガツガツ」や「むしゃむしゃ」などオノマトペ(擬音語・擬態語)を入れる子もいれば、「野ウサギ」など動物を入れる子もいます。それぞれのことばに合った作品世界や、イメージが豊かに広がります。そこで詩人工藤直子が紡いだことばを知らせます。「しみじみ」。先程と同様に対象世界(作品と詩人)、他者、自己との「3つの『対話』」が導かれます。

 ことばは、ふだん意識しない空気のような存在です。ことばそのものと向き合い、自分の言語生活に対する自覚を促すのが国語科の役割です。「3つの『対話』」は、「アクティブ・ラーニング」を支え、ことばと向き合ったり、自分が用いたことばやことばづかいをメタ化したりする原動力となります。その先には、ことばを介して自己の成長に気づく子どもの笑顔が待っています。

山梨大学准教授 茅野政徳
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