「学習言語」とは、物事を認識したり、考えたりするときに使用している言語です。例えば、天体、時間、エネルギーのように、具体的に見たり触ったりすることが難しい事象について、理解したり考えたりするときに使う言語です。また、ある状況を前後の状況と関連付けながら捉えて、今後どのようにすればよいのかを考えるときにも使う言語です。
つまり、児童期に本格的にスタートする教科学習の理解や複雑な対人関係の構築にあたって「学習言語」は大切な役割を担います。
この「学習言語」を、子どもたちは、「生活言語」と呼ばれるものを土台に獲得していきます。「生活言語」は、比較的身近な人との間で使われる、見て触って確認できるものについての言語、表現が未熟でも場を共有していれば汲み取ってもらえる言語などで、幼児期に獲得されます。
この「生活言語」という土台が育っていると「学習言語」を積み上げやすくなりますが、「生活言語」から「学習言語」への移行が円滑でなかったり、移行できる段階でなかったりすることもあります。
「生活言語」から「学習言語」への移行について、ナラティブと呼ばれる活動が橋渡しの役割を担っているという考えがあります。ナラティブという言葉は意味が多様ですが、ここでは、「過去の出来事について、その出来事を共有していない人に伝える活動」とします。
ナラティブには、幼児期に盛んになる「あのね、ほいくえんにね、〇〇せんせいっていう人がきたのね。それで、かぶきっていうのをおしえてくれたんだけど、うまくいえないんだけど、うごいて、こえもだして、むずかしかったんだけど、たのしかった。」のような、お喋りも含まれます(発話例:5歳男児)。
簡単な構造ではないこと、また、語彙、時制を含めた文法の的確さ、聞き手が何を知っていて知らないのかを推察しながら話す力、話が伝わっているのかを確かめながら話す力などが総動員されていることが、想像できるのではないでしょうか。
目の前にいる子どもに、教科学習の理解や対人関係の構築に支えが必要な様子がみられた場合、もしかしたら言語の発達が関係しているかもしれないという視点が大人にあると、適切な相談先へ繋げることができます。共有していない体験を誰かに伝える力があるかどうかは、日々のお喋りの中で、様子を見ることができる力の1つだと思います。
言語の専門家による評価と支援によって、困難さは軽減していきますので、ぜひ、子どもの実態を捉えるときの視点の1つに「学習言語」を加えてみてください。